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2026年04月10日08:09

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M.W. クレイヴン『デスチェアの殺人』上下(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読みました

M.W. クレイヴン『デスチェアの殺人』上下(ハヤカワ・ミステリ文庫)を読みました。
著者は、英国カンブリア州在住のミステリ作家であり、本書は2018年に発表し英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールド・ダガーを受賞した『ストーンサークルの殺人』から始まるワシントン・ポーのシリーズ第6作です。私は全部発表順で読んでいます。全部読んでいますが、細かな点は忘れているのではないかと思います。
本書の英語の原題は The Mercy Chair であり、2024年の出版です。下巻の解説にありますが、新刊が出るたびにシリーズ最高傑作を更新し続けているシリーズだそうです。確かに、シリーズすべてを読んでいるミステリファンとして、どんどん複雑怪奇になって、現実離れした作品になっているのはよく理解できます。同時に、それを最高傑作と呼ぶのも理解できます。エンタメ作品として現実にはありえないような小説を読むのが、私自身も楽しみですから、そのあたりはまさに小説を読む醍醐味です。
前置きが長くなりましたが、本書ではカルト教団<ヨブの子どもたち>が疑惑の中心となります。まず、殺害されるのは、そのカルト教団の創設者であり、カリスマ指導者であった人物なのですが、いかにも、というカンジで、木に縛りつけられて状態で石を打ちつけられて殺害されています。聖書の刑罰を模した奇妙な殺害方法なわけです。そのカルト教団の教義は、キリスト教右派的なもので、同性愛や避妊を否定し、キリストはテニス選手だったボルグのような西欧系の金髪碧眼でありユダヤ人ではない、などなどです。
そして、2種類の新たな味付けがなされています。まず、冒頭から、一連の殺人事件に関わってポーがトラウマになり、トラウマ療法士のカウンセリングを受けて、その事件を回顧する形でストーリーが進みます。もうひとつは、会計検査といいつつ、実は、MI5のスパイが捜査に常に同行します。そして、徐々に真相が明らかにされるとともに、最後には驚くべきどんでん返しも待っています。
加えて、殺人事件が解決されるだけではなく、ポーにも別れが待っているようです。書店で立ち読みできるレベルのネタバレで、下巻背表紙の最後のセンテンスは「さらば、ワシントン・ポー」で終わっています。はい、後は読んでみてのお楽しみです。さらに、最後の解説ではシリーズ第7作 The Final Vow もすでに刊行されている旨が明らかにされています。
最後の最後に、私自身のメモ代わりに4点上げておきます。具体的なページはロストしましたが、少なくとも1箇所でカルト教団の名称が<ヨブの子どもたち>でなく、<ユダの子どもたち>とミスっていました。英語の原文のミスか、邦訳のミスか、はたまた、著者による意図的なものか、気になるところです。第2に、私が授業で使ったことのあるラテン語 "post hoc ergo propter hoc" に言及されています。「前後即因果の誤謬」と正しく邦訳されています。何の意味かはweb検索をオススメします。第3に、第7作は The Final Vow なるタイトルだと聞き及びましたが、ドイルのホームズ・シリーズは His Final Vow です。何か関係があるのだろうと、ほのかに感じます。最後の第4に、ポーの相棒のブラッドショー分析官の役割は、かなりの程度にAIで代替できそうな気がします。この先、AIの進歩とともにどのような役割がブラッドショー分析官に付与されるのか、とても気になります。

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