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2026年04月02日08:00

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池井戸潤『BT'63』(ハーパーコリンズ・ジャパン)を読みました

池井戸潤『BT'63』(ハーパーコリンズ・ジャパン)を読みました。
著者は、もちろん、小説家であり、日本でも有数の売れている小説家といえます。『下町ロケット』で第145回直木賞を受賞しています。
この作品は、2003年に朝日新聞社から単行本として出版された後、2006年に講談社文庫として上下分冊で刊行され、昨年2025年3月に文庫本を底本としてハーパーコリンズ・ジャパンから最び単行本化されています。
ですので、主人公の大間木琢磨が21世紀初頭から40年前、東京オリンピック前夜の1963年にタイムスリップするような形で、父親である大間木史郎の視点から現実の過去を見てしまいます。表紙画像からも判る通り、当時のトラックはノーズの突き出たボンネット型であり「BT」とはボンネット・トラックの頭文字です。
大間木琢磨は30代半ばで、神経だか、脳だかの病気で入院していましたが、退院しています。ただ、入院に前後して妻とは離婚し、会社は辞職しています。そして、なぜか、5年前に亡くなった父親の大間木史郎が40年前の1963年の東京で経験したことが夢として見えるようになります。繰返しになりますが、タイムスリップに近い印象を私は持ちました。
小説の大部分は大間木史郎が東京の大田区の運送会社の経理や人事担当の総務課長として実際に経験したことです。オリンピック景気が終了し不況期に入り、大間木史郎が勤務する相馬運送も業績が悪化します。トラック運転手の従業員4人、それもみんなBT21、すなわち、ボンネット・トラック21号と呼称されるトラックの運転手が相次いで無惨な死を遂げます。
父親の大間木史郎が残したイグニッションキーがそのBT21のものでした。それを現在21世紀初頭の大間木琢磨がそれらの死の謎を解明しようと試みます。この作者らしく、そのうちの重要な関係者の1人が銀行員です。当時の相馬運送に融資していた三つ葉銀行羽田支店の融資担当の桜庭厚がキーマンの1人となって、40年前の彼の記憶から主人公の大間木琢磨が事実関係の解明に挑みます。
父親の大間木史郎が結婚前に相馬運送の経理補助として雇った薄幸の女性、トラック運転手が関わった闇の仕事、傾き始めた相馬運送の新規事業への大間木史郎の奮闘と挫折、などなど、単行本で650ページを超える力作であり、この作者のかなり初期の作品です。
私自身はこの作者のデビュー作である『果つる底なき』は読んでいませんが、私がこれまでに読んだ中でもっとも古い、というか、初期の作品は、たぶん、『空飛ぶタイヤ』でしたが、そのさらに2-3年前の作品です。当然に、『鉄の骨』や半沢直樹シリーズ、『下町ロケット』などでブレークする前の作品です。かなりファンタジックな要素があるものの、その後の作品を彷彿とさせる硬派な面も見えます。
この作家のファンであれば、読んでおいて損はないと思います。

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