mixiユーザー(id:68108846)

2026年03月14日07:49

54 view

葉室麟『螢草』(文春文庫)を読みました。

葉室麟『螢草』(文春文庫)を読みました。
著者は、時代小説作家なのですが、2017年に亡くなっています。本書は2012年に双葉社から単行本として出版され、2015年に双葉文庫で文庫化され、今年2026年1月に文春文庫で再文庫化されています。
本書の舞台は江戸末期の小藩である鏑木藩です。主人公は女中として武家に仕える16歳の菜々です。菜々が仕える風早家は150石取りながら、鏑木藩は5万2千石の小藩ですので、中士ではなく上士の格となります。主人の風早市之進は藩内の改革派で、清廉な人物であり、病弱な妻の佐知とともに菜々にやさしく接してくれ、子どもの嫡男の正助ととよもよく菜々に懐いています。年配の家僕の甚兵衛が通いで主人に仕えています。
菜々はもともと武士の娘でしたが、父親が城内で刃傷沙汰に及んで切腹を命じられお家は断絶し、母親の里の赤村の庄屋の家で育っています。母親の五月が亡くなり、菜々が赤村を離れて風早家に仕えるようになったわけです。
しかし、病弱だった奥方様の佐知が亡くなり、主人の風早市之進が謀略にあって罪人として江戸に送られたあげく、他藩預かりという流罪に処せられます。もちろん、風早家のお子2人と菜々は屋敷から追い出されます。何と、菜々の父が刃傷沙汰に及んだ仇が、風早市之進を嵌める謀略を仕組んだ黒幕と知ります。
菜々はがんばって自活し、質屋のお船、地廻りの親分である涌田の権蔵、鏑木藩の剣術指南役である壇浦五兵衛、塾を開いている儒学者の椎上節斎らの助けを得て、父親の仇を討ち、風早市之進の復権を目指す、というストーリーです。結末は見えているわけですが、あらすじはここまでとします。
それほど重いお話ではありません。例えば、菜々に助力するお船を「おほね」と、涌田の親分を「駱駝の親分」と、壇浦五兵衛を「だんご兵衛」と、椎上節斎を「死神先生」と、それぞれ誤って呼びかけるというコミカルな要素もありますし、全体のお話のトーンがとても明るい時代小説です。
最後に、菜々に助力する人々の設定がとてもご都合主義的に見えるかもしれません。でも、時代小説はしばしばこういった人柄のいい主人公に自然と加勢する人が集まる、そして、主人公は成功裏に目的を達成する、あるいは、勧善懲悪ハッピーエンドのお話が完成する、というものです。その点が、私が時代小説に感じる大きな魅力のひとつだといえます。昭和の時代まで、能力ではなく人柄で仕事している人はいっぱいいました、

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する