福井健太[編]『横丁の名探偵』(創元推理文庫)を読みました。
著者は、書評家であり、ワセダミステリクラブのご出身です。
本書は、昨年、創元推理文庫から出版されたアンソロジーの第2弾であり、「読者への挑戦」ものを中心に精選されています。同じ編者による『新・黄色い部屋』が第1弾となり、シリーズは全3巻を予定しているようで、次回は2月末に同じ編者により『意外な犯人』の出版が予定されています。
本書は7話の短編を収録しています。以下、収録短編ごとにあらすじは、まず、仁木悦子「横丁の名探偵」では、落語のように八っつぁんとご隠居さんの会話から始まります。長屋の一角で掛軸の盗難事件が起こり、ご隠居さんが犯人の言動から真相を突き止めます。続いて、石沢英太郎「アリバイ不成立」では、マイホームブームの中で悪徳不動産詐欺師が殺害されます。何人かの被疑者には犯行時刻のアリバイが主張されますが、結局、成立しないアリバイばかりの中、意外な犯人が浮かび上がります。
続いて、巽昌章「埋もれた悪意」では、恩人の息子を探すためにテレビ放送で呼びかけた依頼に2人が名乗りを上げますが、赤ん坊を取り上げて肉体的な特徴を把握するという産婆が殺されてしまいます。続いて、泡坂妻夫「ダイヤル7」では、元刑事の回想から始まり、暴力団の抗争から一方の組長が殺害され、その時に起こった地震から真相が解明されます。続いて、岡嶋二人「聖バレンタインデーの殺人」では、菓子教室のバレンタインイベントでチョコレートの交換会が開かれ、毒入りのチョコを受け取った被害者が死亡します。限られた時間と場所、関係者の証言から、巧妙なトリックが明らかになります。
続いて、中西智明「ひとりじゃ死ねない」では、高校の料理クラブで自殺者が出た後、OBとOGたちの間に不審な出来事が続き、過去の確執や思い出が絡み合う中、事件の真相が明らかにされます。最後に、今邑彩「時鐘館の殺人」では、新人ミステリ作家である「私」が、自作の犯人当て短篇を本筋の物語に織り込む異色作です。登場人物の言動や館の構造などがヒントとなり、一度は解決編が示されるのですが、読者からも挑戦状が寄せられる多重解決ミステリとなっています。
最後に、私はさかのぼって同じ編者による『新・黄色い部屋』を読みたいと思いますし、次に出る予定の『意外な犯人』も読みたいと思います。少なくとも本書は、1960年代から70年代のミステリで、現在のようなDNA鑑定などの科学的な操作方法は確立しておらず、それだけに論理的な謎解きが展開されます。しかも、その時代背景とともに楽しむことが出来ます。
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