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2026年01月28日08:50

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小川洋子『サイレントシンガー』(文藝春秋)を読みました。

小川洋子『サイレントシンガー』(文藝春秋)を読みました。
著者は、芥川賞作家であり、本書は著者の6年ぶりの長編小説だそうです。ですので、私も大きな期待を持って読んだ次第です。
主人公は両親を亡くしておばあさんと暮らすリリカです。農業を主体として自給自足に近い生活を目指す「アカシアの野辺」がE-5地区に移り住んで開墾して畑を耕し、動物を飼い始めます。内気な人々であり、言葉で話すことをせずに指言葉で会話したりします。気象管と呼ばれる涙形のガラスのペンダントをしています。日本的にいえばヤマギシ会を思わせるところがあり、海外ではアーミッシュを連想する人がいるかもしれません。
その門番小屋の雑用係としてリリカのおばあさんが雇われ、「アカシアの野辺」の内気な人々と外部との接点となります。リリカは役場から依頼されて夕方に流す放送向けに「家路」を歌ったりしながら成長し、高校卒業直前におばあさんが亡くなってからは門番小屋の雑用係の仕事を引き継ぎ、同じように、「アカシアの野辺」の人々と外部との接点となります。「アカシアの野辺」で出来た農産物の販売をしたり、自給自足しきれないものを外部の商店などで買ってきたりします。
それだけではなく、ボイスレッスンに通って、先生から歌のアルバイトを紹介されたり、「アカシアの野辺」で羊の毛を刈る際には「羊のための毛刈り歌」を歌ったりします。リリカは自動車免許を取得し行動範囲を大きく広げ、有料道路の料金所の男性と淡い恋をしたりもします。
はい、純文学ですので、ボイスレッスンを始めた経緯や料金所の男性との恋の行方など、個別のストーリーの流れも興味深いところなのですが、文章表現や文体を楽しむべき読書ではないか、という気がします。ただ、沈黙を言葉にして表現するとどうなるか、あるいは、沈黙=サイレントな状態で歌はどう聞こえるのか、といった疑問に対しては、作者は見事なまでに答えを用意しています。久しぶりに心が澄み渡るような小説を読んだ気がします。

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