先の日記に書いたように、電気メスによる火傷は、電気メスから出力される電流が、人体に装着された対極板に吸収されずに、対極板以外の人体から漏れてしまうことによって発生する。
そこで、考えられるのは、電気メス機器が「接地型」がよいか、「非接地型」がよいか、という問題であった。
詳しい説明は省略するが、モノとモノとの間には必ず浮遊容量、及び浮遊抵抗が存在する。
容量とは電気・電子用語で electric capacity (通常 C で表す) 、抵抗とは elecric resistance (通常 R で表す)のことである。
モノとモノとの間に C及びR が必ず存在し、かつ、モノとモノとの間に電圧が、かかれば必ず、電流が流れる。
上記した「接地型」とは、前の日記に書いた対極板をアースに接続する方法であり、「非接地型」とは、アースから絶縁する方法である。
絶縁すると言っても、完全に絶縁することは、前記した浮遊容量や浮遊抵抗の存在により不可能である。
そこで、私は、「接地型」が良いか、「非接地型」が良いか、計算することにした。
その計算方法は、電気メス機器、手術される人体、及び対極板を一つのシステムとしてモデル化して計算した。
浮遊容量及び浮遊抵抗を、いろいろ変えて、対極板以外に流れる電量を計算した。そのような電流を「漏れ電流」と称した。
当時、計算といえば、手計算か算盤か計算尺しかなかった。
モデル自体は簡単なものだったが、パラメータ (浮遊容量及び浮遊抵抗) を、いろいろ変えて、「漏れ電流」を計算することは実に厄介であった。現在ではパソコンで簡単に計算できるだろうが、当時は前に書いたようなツールしかなかった。
( 余談だがケプラーだか誰だかが、惑星の運動の軌跡を手計算したそうだが、私は、そんな芸当は夢のまた夢、神技としか思われない。)
その頃、電卓が市販され始めた。と言っても加減乗除しか出来なかった。上記したモデルでの計算は加減乗除できれば充分だった。
私は、薄給の身ながら、誰かの言葉ではないが、崖から飛び落ちる思いで、自腹で電卓を買った。よく覚えていないが、十万円ぐらいだったと思う。
現在では電卓は玩具同様だが、当時の私は、まさに宝物だった。計算が、これほど容易にできるとは !! まさに涙ものだった。
この電卓のおかげで、なんとか、上記したモデルを使って、報告書を作成できたのだった。
但し、この報告書で、接地型」が良いか、「非接地型」が良いかの結論は出さなかったと思う。強いて思い出すと「接地型」のほうが有利と書いたような気がする。
私は、学校の卒論や論文等は捨ててしまう癖があって、今、この日記を書くにあたって、それらを残しておけばよかったと思わなくはない。
いずれにせよ、このときほど、たとえ加減乗除しかできなくとも、電卓というツールを有難く思ったことはない。
電気メスと聞くと、私は当時の電卓を敬意をもって思い出す。
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