1月に『ラプソディ・イン・ホルン 3』がリリースされ、NHK交響楽団の首席奏者あるいはソロ奏者として絶好調の活躍を見せる福川伸陽氏。
今夜はそんな彼のリサイタル。
もちろんピアノは三浦友理枝嬢である。このデュオも前のアルバムからだからずいぶん長く組んでいる。しかも二人とも東京六人組のメンバーでもある。
01.カサド:愛の言葉
02.メシアン:峡谷から星たちへ、より、第6曲『恒星の呼び声』(ホルン・ソロ)
03.グラズノフ:エレジー ト短調 Op.44
04.ローゼンブラット:カルメン幻想曲
<休憩>
05.川島素晴:ラプソディ・イン・ホルン 〜ホルン吹きの愉快ないたずら〜
06.鈴木優人:モーツァルティアーナ(ホルンとピアノのためのしりとりヴァリエーション)
07.ヒンデミット:ホルン・ソナタ ヘ長調
<アンコール>
08.マーラー:原光(交響曲第2番 ハ短調 『復活』より、第4楽章)
09.ドビュッシー:美しき夕暮れ
1曲目から福川くんの歌心と技巧に魅せられてしまう。
これの原曲はチェロ。
一転して現代曲のメシアン。
大規模なオーケストラ作品の『峡谷から星たちへ』よりホルン独奏曲。
ピアノのペダルを下げっぱなしにして、ピアノを共鳴板のように使う。なので金属音のような残響が長く残る。非常にユニークだ。スコア上の指定なのかどうかはわからない。うちにあるCDで確認してみよう。
技術的にも相当な難曲であろうことは想像に難くない。
真の達人のみが破綻なく演奏できる曲であろう。見事である。
彼の歌心がたっぷり味わえたのがグラズノフのエレジー(原曲はヴィオラ)。グラズノフの作品はあまり馴染みがなく、これもおそらく初めて聴いたのだろうが、とてもいい曲だ。
中間部での激しいピアノが印象的。
前半最後はお馴染みのカルメンを題材にしたヴィルトゥオーゾ・チューン。
ホルンもピアノも超絶技巧のオンパレードだ。ときおりジャズっぽいフィーリングも感じる。
原曲はクラリネット用。木管楽器用の超絶技巧曲をホルンで実現させることがどれほど困難なことか…。
後半は抱腹絶倒の2曲から。いずれも彼らのために書かれた新曲である。
『ラプソディ・イン・ホルン』はオーケストラの魅力的なホルンのフレーズを巧みにつなぎ合わせたラプソディ。お馴染みのメロディがガンガン飛び出してきて思わずニヤリとしてしまう。楽しい。
こういう曲に批判的な人もいるだろうが、こういう楽しい曲があってもいいのではと思う。古今引用は技術のひとつ。オマージュでありリスペクトでもある。
『モーツァルティアーナ』はモーツァルトのホルン協奏曲第1番のメロディーを、作曲家の英語名でしりとりをするようにその作風っぽく変奏していくというもの。遊び心たっぷりでしかも理知的な曲と言えよう。
技巧的なのはもちろんのことホルンを叩くピアノを叩くなどの特殊奏法(?)まで織り交ぜてある。
たぬ〜の緊急手術で初演に立ち会えなかったのだが、ようやく聴けて嬉しい。
ヒンデミットはいろいろな楽器のためのソナタを書いた。
いろいろ聴いてみると意外に聴きやすい曲が多い。
ホルン・ソナタもそんな曲だった。美しいメロディーで魅了するというタイプの曲ではないが、リズム処理やハーモニーが斬新だ。当時としては新しかったのだろうが、今となっては抵抗感はない。
ホルンとピアノのコンビネーションが難しそうな曲だが、この二人に抜かりがあろうわけがない。
アンコールはなんとマーラー。
アルバムに収録されているのだが、まさか実演で聴けるとは思わなかった。
本来の歌以外のバージョンで聴いたのは初めてかもしれない。マーラーが優れたメロディーメイカーであることを改めて知らされた。柔らかな音色でメロディーを紡ぐホルンも見事だが、抑えたタッチで美しい音色を響かせたピアノも素敵だった。
大好きなマーラーの曲を友理枝ちゃんが弾いてくれるなんてまさに至福の時…。
クロージングはドビュッシーの穏やかな歌曲。
ホルンの音色が黄昏時の色合いによく似合う。
充実したリサイタルだった。
このデュオは見事である。
非常に知的で音楽的な演奏家であり、どこか求道者のような趣があるところも似ている。
ウマが合うのだろう。
彼らのための新曲もたくさん生まれている。
ますます楽しみなデュオだ。
前回のリサイタルはたぬ〜の手術の翌日だったので行くことができなかった。
福川くんがたぬ〜との再会を喜んでくれたのが嬉しい。福川くんも心配してくれていたからなあ。
こちらの言葉が足りないところは友理枝ちゃんがフォローしてくれていた。
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