みなさんは自分の好きなミュージシャンが自分の嫌いなタイプの音楽を好きだということがわかったらどう思うだろうか?
別に関係ない、と思うか。
いいんじゃない、何が好きだって、と思うか。
ガッカリだ、もう嫌いになった、と思うか。
BABYMETALのMOAMETALがインタビューで答えた発言が世界を震撼させている。
ツアーバスに乗り遅れ次の町に歩いていかなければならないとき、何を聴くか、という質問があった。
YUIMETALはアリアナ・グランデをリピートすると答えた。アリアナ・グランデはマライア・キャリーの再来と言われることもあるシンガー。YUIが彼女のファンであることはよく知られている。
SU-METALは自分たちの『Road of Resistance』を選んでいる。未来を切り拓くという意味をもつ曲だからという理由で。
そして、MOAMETALはワン・ダイレクションの『Midnight Memories』という曲を選んだ。
それが世界を震撼させているのだ。
ワン・ダイレクションはこちらでいうジャニーズのグループのようなものらしい。
メタラーから見たらクズのようなものに見えるのだろう。
メタル・アイドルのMOAがワン・ダイレクション好きとは…、と世界の終わりが近づいたようなコメントが多くて笑える。
何が好きでもいいではないか、と思う。
メタル・アーティストはメタルしか聴いてはいけないなんていうルールはどこにもない。
彼女たちはBABYMETALを結成するまでメタルのことなどまるで知らなかった。今ではメタルも聴くようになったろうし、勉強もしているだろうが、素顔は十代の少女なのである。三人ともさくら学院の出身で、そこではガールズ・ポップを歌っていた。メタルしか聴いていないということなどありえまい。
しかし、ワン・ダイレクションの評判の悪さには苦笑を禁じえない。
ずいぶん嫌われたものである。
YUIに対しては騒ぎになっていないのはアリアナ・グランデが女性だからかもしれない。
ちなみに、MOAはワン・ダイレクションを好きだとは一言も言っていない。彼らの曲を選んだに過ぎない。
それに彼らがベビメタに対して好意的な発言をしたことに対する返礼ということだってありうる。
だいたいこのインタビューがお蔵入りにならずに公開されたということはベビメタの運営サイドもOKを出したということだろうから、この騒ぎも想定済みなのかもしれない。
もともと人の想像のナナメ上を行く展開をしてきたベビメタなので驚くにはあたらない。
そもそもベビメタ自体が散々叩かれ続けてきたわけだ。今だってアンチやヘイターはたくさんいる。
逆に世界中のワン・ダイレクション・ファンの女の子にアピールしたかもしれない。
これもアイドルやメタル以外にも市場を広げていこうとする戦略のひとつだと考えられなくもない。
なんにしてもこの騒動は笑える。
私は彼女たちが何を聴こうが何を好きだろうが一向にかまわない。
ベビメタはメタルという枠を広げてさまざまな要素を貪欲に取り入れて成功した。そういう純血メタルとは言えない音楽を受け入れる度量がファンにはあるではないか。彼女たちの嗜好が自分たちに合わなくてもそれを楽しみ自分の世界を広げるくらいの器の大きさを見せろよ。
たとえばスレイヤーの連中がスラッシュ・メタルばかり聴いているかといえばそんなことはない。
故ジェフ・ハンネマンはキング・クリムゾンを聴いていると言っていたことがある。恐ろしげなるトム・アラヤに至っては普段クラシックを聴くこともあるそうだ。そのミスマッチが楽しいではないか。
とはいえ、世の中には特定の音楽しか聴かない人は多い。
メタルだけのことではない。クラシックしか聴かない、ジャズしか聴かない、という人も多い。
それは個人の嗜好だから文句を言う筋合いのものではない。もっといろいろな音楽を聴けば楽しいのに、と言っても大きなお世話。その人たちはそれで十分楽しいから問題ないのだ。
だからそのことをどうこう言うつもりはない。
ただ自分の好まない(あるいは嫌いな)音楽を悪く言うのはやめておけと言いたい。
自分の好まないものを貶めようとすることは自分の心の狭さを示すことにほかならない。それが如何に愚かな行動であるか認識するべきである。
メタラーはメタルというジャンルがマイナーであるということをわかっているので、それだけ思い入れの度合いが強いのだろうというのはわからないでもない。回りの多くの敵を叩くことで自らを守る、そんな意識もあるのかもしれない。根は純粋なのだろうとも思う。
始末に負えないのは一部の選民意識の高いクラシック・オタクやジャズ・スノッブであろう。
若い女性演奏家を追いかけるのは、アイドル歌手を追いかけるのとどこが違うというのだ?
だからさ、人の好きなものをけなすのはやめておけよ。
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