大好きなヴァイオリニストである。
柔らかな音色、豊かな歌心、そして凛としたその立ち姿。
やはりヴァイオリニストはその立ち姿が美しくなければ、と思う。
川久保賜紀は本当にいいヴァイオリニストだ。
先日ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会の二回目を聴いてそう思った。
そして昨年の一回目を聴き損ねたことを残念に思う。
そのときの全ては無理だが、スプリング・ソナタを聴ける機会が訪れた。
ピアノも江口玲氏だ。
というわけで越谷まで出かけてきた。
好評企画のティータイムコンサート。今回が157回目なのだそうだ。
残念なことに客の入りは7割程度か。空席が目立つ。もったいなさすぎる。
川久保賜紀:ヴァイオリン
江口玲:ピアノ(1887年製、NYスタインウェイ・ローズウッド)
岡部真一郎:お話
01.クライスラー:序奏とアレグロ
02.クライスラー:美しきロスマリン
03.クライスラー:中国の太鼓
04.ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24 『春』
<休憩>
05.武満徹:妖精の距離
06.シューマン(リスト編):献呈(ピアノ・ソロ)
07.スーク:愛の歌 Op.7-1(ピアノ・ソロ)
08.バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民俗舞曲
09.サラサーテ:アンダルシアのロマンス Op.22-1
10.ラヴェル:ツィガーヌ
<アンコール>
11.クライスラー:愛の悲しみ
最初のクライスラーの序奏とアレグロ、それも序奏の部分ですでに心を持っていかれてしまった。
お目当てのスプリング・ソナタもさすがの好演。歌心たっぷりの節回しに、適度な緊張感。
心がほっこりするような演奏だった。やはり暖かみのある音色が心地いい。
休憩を挟んで、来場者から募った質問に対して賜紀ちゃんが答えるコーナー。
そして後半は武満作品から。
これはいい曲だし、いい演奏だった。ゆったりしたテンポゆえに、より確かな技巧を求められるように思われる。現代曲だけれど、その核は抒情的なメロディーである。
もしかしたら、今回のコンサートのクライマックスはこれだったかもしれない。
ここでピアノ・ソロで2曲。
ソロになると別人のように激しいピアノになるのがおもしろい。
伴奏の名手と言われるし、確かにそうだと思うが、やはり押しと引きを弁えた優れた手腕があってこそである。多くのソリストから絶大な信頼を得ているのはダテではない。
終盤は民俗色豊かな曲が3曲続く。
各曲の弾き分けも見事。
あまり言われることはないかもしれないが、高度な技巧の持ち主でもあるなあ、と思う。
サラサーテの哀愁のメロディーもよく合っているが、敢えてザラついた音色を駆使したバルトークとラヴェルも素晴らしい。
今回のコンサートは賜紀ちゃんの様々な音楽性を披露するものとなった。
さりげなく、どの曲も彼女の色に染め上げているのがさすがだ。
アンコールはモンティのチャルダッシュだと予想していたのだが、見事に外れた…。
『愛の悲しみ』もいい曲だけどね。しっとりと締めたかったのかな。
彼女の笑顔は本当に愛くるしい。
邪気を全く感じさせぬその笑顔に魅了されてしまった人は多いに違いない。
最高に可愛いショットを撮らせてもらうことができた。
いずれ紹介したいと思う。
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