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2015年02月03日22:24

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ゲイリー・セインというベーシスト

ロック・バンドの性格はドラマーで決まるとも言われるが、バンドのグレードはベーシストで決まるのは間違いない。
堅実にリズムキープに徹するのもいいが、やはりリード・ベースと言われるようなプレイが好きだ。ジョン・エントウィッスル(ザ・フー)、クリス・スクワイア(イエス)、アンディ・フレイザー(フリー)、スティーヴ・ハリス(アイアン・メイデン)、ゲディ・リー(ラッシュ)、ジャン・ジャック・バーネル(ストラングラーズ)といったところがすぐに浮かんでくる。ほかにもいっぱい浮かんでくるのだが、キリがないのでやめておく。

で、絶対に忘れてはいけないのがゲイリー・セイン(Gary Thain、1948〜75)。
ユーライア・ヒープの黄金期を支えたベーシストである。だが、先に挙げた連中に比べ知名度は著しく低い。ただ、リード・ベースというと必ず名前が出る人でもある。
なにより個性的なのはそのメロディーセンスである。
非常にメロディックなフレーズをこれでもかと繰り出してくるのだ。ときとしてヴォーカルやギターやキーボードのメロディーよりも印象に残るほどである。フロントにとっては迷惑極まりないと思いきや、それがユーライア・ヒープの音楽を重層的に響かせていたことをメンバーはよくわかっていたのだろう。同じ編成でありながらディープ・パープルと異なり、プログレ的な文脈で語られることが多いのはそのあたりにも理由がありそうだ。

名盤と言われる『Look At Yourself(対自核)』に彼は参加していない。
その後の『Demons And Wizards(悪魔と魔法使い)』『The Magician's Birthday(魔の饗宴)』『Sweet Freedom』『Wonderworld(夢幻劇)』の4枚のスタジオ・アルバムに参加。
ライヴ中の感電事故で大怪我を負い、奇跡的に再起を果たしたものの、リハビリ中に溺れたドラッグに命を奪われた。27歳という若さであった。
まさにロケンロールな生き方をした人である。
感電事故さえなければユーライア・ヒープの全盛期はもっと長く続いたかもしれない。もし脱退したとしても彼ほどの腕があれば多くのバンドから誘われたことだろう。
実働期間が短かったこともあってか、あまり知られていないようだ。それでも彼からの影響を口にするベーシストは少なくない。

ユーライア・ヒープ全盛期のライヴ盤『Live '73』というものがある。
ロック界の名ライヴ盤として名高いものだが、ここでのゲイリー・セインのプレイはまさに神業である。『対自核』の曲を彼のベースで聴けるのも嬉しい。メロディックなフレーズはそのままに、ライヴということでたっぷり暴れている。

まあ、何をどう言っても、私は彼のベースが好きなのだ。
好きということでは、ジョン・エントウィッスルやクリス・スクワイアよりも好きかもしれない。

ユーライア・ヒープというのはベーシストが安定しないバンドだった。
安定しないくせに凄腕ばかり揃えている。
初代はポール・ニュートンで名盤『対自核』で弾いているのは彼。結構太い音で印象的なベース・サウンドを聴かせる。個性的なベース・ラインというのはすでにこのころから確立していたことがわかる。
二代目は元コロシアムのマーク・クラークだが短期間の在籍で音源は残っていないようだ。
そして三代目がゲイリー・セイン。
四代目にはなんとあのジョン・ウェットン! キング・クリムゾン時代の暴れっぷりと比べるとバンドに合わせたという感もあるが、実力の片鱗を窺い知るには十分だ。
五代目はデヴィッド・ボウイのバンドでうねうねしたベースを弾いていたトレヴァー・ボルダー。ブイブイ唸るベースを聴かせる。
こう見るとガチンコで凄いヤツらが在籍している。リズム・キープ以上の役割をベーシストに求めていたということでもあろう。
なので、個性的なベースがたっぷり聴けるということもあり、70年代のユーライア・ヒープはどの時代も好きである。
ただね、やはりゲイリー・セインは特別だったと思う。低音メロディー担当とすら言われる彼のベースは裏メロを取るどころではない。まさに対位法である。ベースが目立つのに決してサウンドの枠からははみ出さない。インタープレイに走らずバンド・アンサンブル重視で、その音色やフレージングがユーライア・ヒープのサウンドにはいちばん合っていたように思う。

好みもあるのだろうが、やんちゃなベーシストがいるバンドはおもしろい。
だいたいベースとドラムにはヘタウマはありえない。バンドの屋台骨を担う役割なのだからふにゃふにゃでは成り立たないのだ。
目立つベーシストはたくさんいる。しかし本当に上手いベーシストはそう多くない。ゲイリー・セインのベースを聴いてそう思った。すでに神の領域に近づいていたのかもしれない。

代表曲『July Morning(七月の朝)』のライヴ・バージョン。映像はコラージュになっているが…。



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