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2010年12月16日22:51

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天使の糧

『天使の糧(パン)』という曲がある。フランクの声楽曲の中で最も有名で、いろいろなバージョンで親しまれている曲である。歌詞はラテン語の典礼文。おおざっぱに言うと「天使の糧は人々の糧となった。天は主を人々の糧として与えられた」というような意味である。歌詞が大切なのは承知しているが、それはそれとして、とにかく綺麗な曲である。

この曲をタイトル曲にしたアルバムが先月リリースされた。ソプラノ歌手の幸田浩子さんの4枚目のアルバムである。新イタリア合奏団をコンビを組んだ2枚目の名曲集といった内容だ。
チャーミングすぎるルックスもさることながら、やはり声で聴かせる。柔らかく温かみのある声だ。高音でも尖らずに耳に優しい。私はもともと声楽系の発声を聴くのがあまり得意ではないのだが、彼女の歌はすんなり耳に入ってくる。声楽はちょっと、と敬遠している人にも自信を持ってオススメできる歌手である。

冒頭のフランクの『天使の糧』、フォーレの『ピエ・イエス』やシューベルトの『アヴェ・マリア』などの有名曲ももちろん素敵なのだが、サン=サーンスの『アヴェ・マリア』が強く印象に残る。とてもいい曲だ。サン=サ−ンスって意外にいい曲が多いんだよな。彼女は2枚目のアルバムでグノーとカッチーニとマスカーニとマスネーの『アヴェ・マリア』を歌っているので、これで6曲が揃ったことになる。ちなみにカッチーニの作品は間違いなく偽作だろう。
ショパンの『別れの曲』やリストの『愛の夢』もあり、彼女のために書き下ろされた曲もあり、クロージングには『聖しこの夜』まで収録されているという豪華盤である。
もちろん、新イタリア合奏団の格調の高い演奏も賞賛すべきだ。ドリーブの『夜鳴きうぐいす』のフルートが美しい。

彼女のソプラノのタイプとしてはコロラトゥーラ。日本にはもうひとりコロラトゥーラの名歌手として森麻季さんがいる。ゆえにお互いのアルバムで曲がかぶるかぶる。というわけで聴き比べてみるのも楽しい。どちらも素晴らしいのだが、声の違いは明らかだ。優劣をつける必要はなく、好みで選べばいいと思う。

だいたい年に1〜2回は彼女のリサイタルを聴いているのだが、今年は聴くことができなかった。
王子ホールのチケットを取っていたのだが、ちょうどたぬ〜の具合が悪かったときで、ドタキャンになってしまった。たぬ〜は多少具合が悪いくらいではキャンセルしないので、相当悪かったということだろう(事実悪かったのだ)。クリスマスのコンサートは名古屋行きとヴァッティングしてしまったし、来年早々のインストア・イベントも別の予定が入ってしまっている。どうも縁がない巡り会わせになってしまっているようだ。
最初に聴いたのは、まだCDデビューする前の紀尾井ホールでのリサイタル。
その前にTVで見たときにはピンと来なかったのだが、完全招待制だったので応募したら当たってしまった。お手並み拝見というちょっと意地悪な気分で行ったら、すっかり魅了されてしまった。見事に返り討ちにあった感じだ。
実はこのときの終演後に撮った写真が今はお宝だったりして。。。もちろん許可を得て。というかご本人がいい立ち位置を決めてくれたのだ。

コロラトゥーラということで、歌う曲の範囲が狭いのではと思いきや、そんなことはないようだ。
一昨年の東京都響のメンバーと共演したシェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』は予想を遥かに超えた歌唱だった。普段よりも低い声が求められるのだが、一般的なピエロのイメージを逆手に取ったかのような、チャーミングでコケティッシュなピエロ像を見せつけた。それだけに毒が強いという印象で、より危険度は高いように感じられた。たいそう好ましいピエロだった。「可愛いふりしてあの子、わりとやるもんだね」といった世界である。

しばらくはCDでガマンだが、来年どこかで聴けるだろう。
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