1月27日、サリンジャーが亡くなった。
そう『ライ麦畑でつかまえて』や短編集『ナイン・ストーリーズ』のサリンジャーだ。
90歳を超えていたのだから大往生と言ってもいいだろう。
しかし、45年あまりサリンジャーは沈黙したままだった。
筆を絶った理由は何なのだろうか。それは研究者によって明らかにされるのだろう。
最初に読んだのは高校生のときだったか。
新潮文庫の水玉模様のカバーの『ナイン・ストーリーズ』だった。当時付き合っていた女の子がサリンジャーのファンで、それで読んでみたのだ。
ドストエフスキーの長〜い小説や、リルケやトラークルといった独墺世紀末に夢中だったので、それらと全く違った世界観は衝撃的ですらあった。いい意味で乾いた文体は洗練されていると感じた。無垢なものを追い求めるかのような純真さはこわれもののような危うさと紙一重だった。
『ライ麦畑でつかめて』も『フラニーとゾーイ』もほかの作品も大好きだが、サリンジャーというとやはり『ナイン・ストーリーズ』に思い入れがある。
若いころはいつでも『ナイン・ストーリーズ』を持ち歩いていた。休みの日の昼下がり、ビアホールに避難して読むのが好きだった。特に夏。暑い日差しを避けるように薄暗いビアホールのカウンターに陣取り、冷たいビールで涼を取りながら読むのだ。そのときの気分に応じて読みたいものを読む。たぶん『対エスキモー戦争の前夜』と『笑い男』がいちばん多かったと思う。
カポーティの『夜の樹』やジョイスの『ダブリン市民』でもよかったのだが、シチュエーションとしてはサリンジャーがいちばん合っていたように思う。
最近は新訳がたくさん出ている。『ライ麦畑でつかまえて』は村上春樹の訳で原題のまま『キャッチャー・イン・ザ・ライ』という版で出ている。『ナイン・ストーリーズ』も柴田元幸の新訳が出ている。野崎孝訳に馴染みすぎてしまっているから、どうだろうか。昔は英語版も読んだものだが…。
これを機会に新訳も含めていろいろ読み直してみようかな。
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