中島隆信『「弱者」の経済学』(東洋経済)を読みました。
著者は、慶応義塾大学名誉教授であり、今までに同じ出版社から『障害者の経済学』、『高校野球の経済学』、『お寺の経済学』、『大相撲の経済学』などのシリーズ(?)を上梓しています。
実は、数年前に日本経済学会の企画セッションだか、何だかで、私が役所の受け持つセッション担当になった際、パネルディスカッションを企画して、中島先生にコーディネーターをお願いしたことがあります。
本書では、タイトル通りに、「弱者」について経済学的な考察を進めています。冒頭章で弱者について考え、生物的弱者、医学的弱者、相対的弱者、立場的弱者の4カテゴリーを本書のスコープとし、動機と結果における利己と利他をかけ合わせて4方向から議論しています。
詳細は読んでいただくのがベストですが、本書のスコープである4カテゴリーについては、生物的弱者には当然に生まれて間もない子どもや人間の場合がほとんどながら高齢者などです。医学的弱者は加齢以外の慢性的疾患を考え、相対的弱者には所得や学力や身体能力とともに、一時的な状態かもしれませんが、自然災害の被災者も含めています。そして、立場的弱者には、企業と雇用者、また、親会社と下請けなどを想定しています。
こういったカテゴリーに対して、利己/利他の動機と結果については、p.10のテーブルが示されています。動機も結果も利他であれば自己犠牲、逆に、動機も結果も利己であれば自給自足、などと示されています。
その上で、生物的弱者の子どもについては教育が取り上げられています。ただ、子どもへの教育について純粋に投資と考えるべきかどうかには見方が分かれるかもしれません。高齢者の線引きを年齢で決めることの妥当性についても議論されています。
医学的弱者は飛ばして、相対的弱者については、学力における偏差値の位置づけについて疑問を呈し、沖縄は弱いのか、また、経済的観点からは日本はそもそも弱者ではないのか、といった議論を展開しています。
最後の立場的弱者についても、雇用者の最低賃金に関する議論は興味深く読めますし、組織内での立場の違いも着目されています。最後の点については、私自身の職業的キャリアが公務員から教員で立場的には強いパターンでしたので、特に関心が高かったです。日本ではかつて官尊民卑という言葉があって、民が官より立場的に弱者と考えられていましたし、病院の医者や大学の教員は組織内で決して弱者とは見なされません。
最終章の結論も十分考えられたものであり、最大の弱者対策は「弱さのある人を弱者にしないこと」としています。まあ、それでも弱者になってしまう、というか、そう見える場合を考えるのも重要だとは思います。
最後に、表紙画像の「弱」の字がややかすれて見えると思います。おそらく、出版社の方で故意に弱々しく見えるようにしているのだろうと思います。
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