リチャード・デミング『絞首台のある庭』(新潮文庫)を読みました。
著者は、米国のハードボイルド調のミステリ作家であり、同じハードボイルド作家として日本でも有名なロス・マクドナルドと生没年がともに同じらしいです。
邦訳は2冊目となります。前作も新潮文庫から出版されており、日本独自編集の短編ないし中編集の『私立探偵マニー・ムーン』です。私はこの前作も読んでいます。本書は作者の初めての長編であり、英語の原題は The Gallows in My Garden であり、1952年の出版です。
舞台は明示されていないものの、状況からミズーリ州のセントルイスであると推測されています。主人公は前作と同じで私立探偵のマンヴィル(マニー)・ムーンです。古い表現ながら、マッチョでハードボイルドなタフガイ探偵です。戦時中は軍隊で軍曹をしていて、負傷したため片足が義足です。脇を固めるのは、地元警察署で殺人課のトップを務めるウォーレン・デイ警視と部下のハネガン警部補、さらに、ジョージ・チェスター署長は戦時中はムーンと同じ歩兵部隊の少佐でした。
警察以外は、前作でオーナーが亡くなって「エル・パティオ」を引き継いでカジノからレストラン&バーに業態転換したファイスタ・モレノはファシスト国家のイタリアから米国に逃れて、ムーンの婚約者だったこともあり、現在でも恋仲に近い感じです。その「エル・パティオ」の警備をしているモウルディ・グリーンは戦時中はムーン軍曹配下の二等兵だったようです。
前置きが長くなりましたが、この作品では、初夏の7月半ばに、ムーンの事務所兼自宅を19歳の女子大生グレース・ローソンが訪れてボディガードを依頼するところからストーリーが始まります。
グレース・ローソンは兄のドン、というか、ドナルド・ジュニアなどとともに、ドラッグストアのチェーンで財を成したローソン家の遺産相続人であり、1年ほど前に自動車事故で亡くなった父親のドン・シニアから、21歳になるまで結婚しないことを条件に、莫大な遺産相続の権利を示されています。
でも、最近、もうひとりの遺産相続人である兄のドン・ジュニアが失踪し、グレースには乗馬の際の馬の腹帯に切れ込みが入れられていたり、ミルクに毒が入っていたり、大きな植木鉢が落下してきたり、と死につながりかねない不可解な事故か事件が起こっているため、ボディーガードの依頼です。しかも、グレースがムーンの事務所兼自宅を去った後に、2人組のギャングがムーンを襲ったりします。
ローソン家にはドン・ジュニアとグレースの継母であるアン・ローソンとアンの叔母で画家のアビゲイ・ストルツが住んでいます。そういった家族とは別に、週末ごとに、グレースのフィアンセのアーノルド・テート、亡くなったドン・シニアの弟でドン・ジュニアやグレースから見て叔父に当たる医師のダグラス・ローソン、ローソン家の顧問弁護士のジョナサン・マナリング、ドン・シニア亡き後にドラッグストア・チェーンの経営を担っているジェラルド・カッシングがやって来ます。また、使用人も女中頭のマギー・サリヴァンほか、数人います。
こういったローソン家にいる、あるいは、やって来る10人あまりの、いわば容疑者がいるわけで、マニー・ムーンが見事にその謎を解き明かします。ミステリの謎解きですので、背景説明はタップリするとしても、あらすじは簡単に終わっておきます。
はい、いかにも米国的なハードボイルドで、謎解きも本格的で楽しめます。
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