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2026年10月07日07:25

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中村伸夫『中国書道史紀行』(大修館書店)を読みました

中村伸夫『中国書道史紀行』(大修館書店)を読みました。
著者は、筑波大学名誉教授であり、日展内閣総理大臣賞や日本芸術院賞などの受賞歴のある書道家であり、全日本書道連盟理事長などの団体役員でもあります。
書道展の関係では読売書法会に関係していて、まあ、何と申しましょうかで、伝統的な書道芸術の方向性が伺えます。ちなみに、日本における三大書道展といえば、伝統的な読売書法展と日展、そして、やや前衛的な毎日書道展となります。ただ、出典数からすれば毎日書道展が最大ともいわれています。読売と毎日はあるのですが、なぜか、朝日新聞は入りません。謎です。
なお、本書はタイトルから書道の名品をたどって旅行するように受け取る向きがあるかもしれませんが、そうではありません。旅行記ではないと考えるべきです。また、中国の書道史ですから漢字だけです。本邦で発展したかな文字の書道は含まれていません。
本題に入って、本書は2章構成です。第1章で書道の歴史について考え、後世の便宜上の分類として発生順の篆書、隷書、草書、行書、楷書を区別し、どうして、楷書が最後で、その後、新しい書体が現れなかったのか、と疑問を呈していますが、当然に回答はありません。
250ページほどの本書の中で200ページを超えるボリュームを持つメインパートが第2章ということになります。歴史を後づけて、殷の時代の甲骨文から始まって、書聖と称される東晋の王羲之、さらに、最後の書体である楷書が完成した北魏から隋と唐、時代が下って最後の清朝までを取り上げています。
私が前世紀に書道を習っていた際は、先生の方針で延々と欧陽詢「九成宮醴泉銘」の漢字を練習していました。ですので、東晋の王羲之から北魏ないし隋・唐の欧陽詢、褚遂良、虞世南、さらに、すこしおもむきがことなるものの盛唐の顔真卿、あるいは、米芾などの楷書や行書が中心となる読書でした。ただし、本書では「九成宮醴泉銘」は誠に残念にも取り上げられていません。
こういった後世に残る書道作品の書き手は、当然に進士及第などの政府高官、というか、中には有能な政治家などがいたりして、決して、支配階級から大きく外れた吟遊詩人的な人物は多くありません。もちろん、時代が下るにつれて「作品のための作品」が多くなりますが、1000年以上も前の書道作品については、何らかの政治性を帯びたものが少なくありません。例えば、私がせっせと練習していたお手本の欧陽詢「九成宮醴泉銘」は、唐の第2代皇帝である太宗が離宮の「九成宮」で避暑中に、甘い湧き水=醴泉を発見した功績を記念して建立された四六駢儷調の名詩を清書した碑文です。そういった政治性を捨象して、現代にも鑑賞に耐える素晴らしい芸術性を残した書道の名品を本書では集めています。

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