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2026年10月06日07:13

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アンドリュー・ハートマン『マルクス・イン・アメリカ』(新日本出版社)を読みました

アンドリュー・ハートマン『マルクス・イン・アメリカ』(新日本出版社)を読みました。
著者は、米国イリノイ州立大学の教授であり、ご専門は歴史学だそうです。
本書の英語の原題は Karl Marx in America であり、2025年の出版です。
はて、米国でマルクス主義がどのように捉えられていて、政治の分野で、あるいは、なんらかの市民運動でマルクス主義が影響を持っているのか、またまた、主として経済学、あるいは、ほかの社会科学の分野で基礎的な理論を提供しているのか、と問われれば、私は疑問に感じます。例えば、日本ではフランスやイタリアなどの欧州諸国と同じで共産党が戦後の政治舞台で立派に活動し、議会でも議席を有していたりします。あるいは、共産党という名ではないとしても、階級政党のような名を冠した英国の労働党やドイツの社民党は政権を担うこともありますし、フランス社会党もご同様です。しかし、米国でも、それなりの共産主義、あるいは、マルクス主義の系譜があることを本書で知りました。
本書は歴史的な構成となっており、19世紀後半の南北戦争を独立戦争に次ぐ第2のアメリカ革命と考え、本書の出発点としています。そして、金ぴか時代(Gilded Age)の労働者の組織化や労働運動、20世紀初頭のボリシェビキ革命に同調した米国におけるジョン・リードらの文学の展開、1930年代の大恐慌におけるマルクス主義、戦後リベラリズムにおける繁栄した米国経済におけるマルクス主義、、マッカーシズムに代表される冷戦下の保守主義、1970年代からのニューレフト=新左翼によるベトナム戦争への反対、1980年代のレーガン政権下における新自由主義への抵抗、最後に、21世紀のマルクス主義を議論しています。
私が注目したのは、米国におけるマルクス主義、というよりも、いくつかの章で分散的に議論されているように、米国でなぜマルクス主義が大きな動きにならなかったのか、についての分析です。ひとつは、米国経済のフロンティアの追求を上げています。特に太平洋岸を目指した米国経済圏の広がりにより、不平等の拡大や資本主義の閉塞感が発生しにくかった、という解釈です。また、マルクス主義がドイツからの移民の思想と受け止められた点も上げています。2度の世界大戦の敵国であり、今でも国連には敵国条項が残っています。
加えて、本書では明確には指摘していませんが、米国における宗教の影響も私は見逃せないと考えています。例えば、『孤独なボウリング』の著者であるパットナム教授が共著で『アメリカの恩寵』という本を書いていて、ソーシャル・キャピタルのひとつとして米国における独特の宗教の役割にスポットを当てています。そもそも、ピルグリム・ファーザーズを持ち出すまでもなく、米国はとても宗教的に濃厚な土地柄だと考えるべきです。
ただ、20世紀半ばからの米国については、ニューディール政策はまったくマルクス主義者でもなんでもないローズベルト大統領が、ケインズ政策的な政策を採用し、1960年代までの民主党政権などで継続されてきたため、資本主義的経済の限界が露わにはならなかった、という点は忘れるべきではありません。
本書でも1935年のワグナー法(全国労働関係法)について同じような視点を提供しています。すなわち、マルクス主義に限定されないながら、国民の利益になるような格差是正や生活水準の引上げなどにつながる政策を左翼や労働者が獲得すれば、それはそれで左翼や労働者の大きな勝利なのですが、同時に、資本主義の限界を露呈させてマルクス主義的な革命をもたらすような方向とは矛盾しかねない、という点があるのだろう、と私は考えています。
もう少し考えれば、米国経済が豊かであっただけに、労働者や一般国民、資本家や富裕層ならざる一般国民の不満が高まらなかった、という点は米国でマルクス主義が盛り上がらなかった一因ではないか、という気がします。ただし、私はマルクス主義に関しては興味を持ちつつも専門性がありませんから、この読書感想文もそれほど自信がありません。

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