ロス・モンゴメリ『ハレー彗星の館の殺人』(角川文庫)を読みました。
著者は、もともと児童向け小説を専門とするロンドン在住の小説家であると巻末解説で紹介されています。英語の原題は The Murder at World's End であり、2026年の出版であり、本書は、著者が初めて挑んだ大人向けの小説だということのようです。
小説の舞台は、イングランドの海岸沿いにあるワールズ・エンドという架空の土地にあるタイズ館、英国貴族であるワールズ・エンド子爵のストッキンガム-ウェスト卿のお屋敷です。ワールズ・エンドはいわゆる潮汐島であり、満潮時には土手道が海水下となって孤立したクローズドサークルを形成します。モン・サン・ミッシェルと同じです。時代は1910年5月であり、ハレー彗星が地球に最接近するタイミングです。
主人公のスティーブン・パイクは20歳前で、少年院から出所したばかりで、このお屋敷の使用人に雇われます。主たる役割は、当主の子爵の大叔母に当たるミス・デシマの召使いです。ミス・デシマは79歳の老嬢であり、当主の子爵の向こうを張って科学者です。なかなかに向こう気が強くて、上流階級にふさわしくない下品な表現も平気で口にしたりします。当主の大叔母なのですから年上ですし、当主の子爵に対してすら何らの遠慮もありません。その上、というか、何というか、移動には車椅子を要します。ですので、使用人が居つかないわけで、雇い入れられたばかりのスティーブンがその役目を押し付けられます。
当主の子爵がハレー彗星の尾の部分に青酸ガスが含まれ、地球上の多くの生物が死に絶える可能性があると考えているのに対して、ミス・デシマはその可能性を一笑に付しています。
繰返しになりますが、当主の子爵は科学者として、それなりの根拠を持って、ハレー彗星の青酸ガスから生き延びるために、タイズ館を封印すべく使用人を総動員します。煙突や窓などを封印してしまい、したがって、タイズ館が全体として、さらに個々の部屋が密室状態となるわけです。そして、ハレー彗星が地球に最接近した翌日、屋敷のタイズ館と各部屋の密封を解いたところ、当主の子爵が殺害されて発見されます。その昔に祖先の一族と同じように目を射抜かれています。
警察やスコットランドヤードの刑事がやって来て、スティーブンは最有力容疑者と見なされてしまいます。ミス・デシマがスティーブンらの助けを借りつつ、犯人探しのwhodunnitと密室殺人というhowdunnitの両方の謎を解き明かそうと奮闘します。
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