mixiユーザー(id:68108846)

2026年09月17日07:35

40 view

佐藤正午『熟柿』(角川書店)を読みました

佐藤正午『熟柿』(角川書店)を読みました。
著者は、小説家であり、本書は2026年本屋大賞次点の2位となっています。
主人公は市木かおり、離婚して旧姓に戻っています。元夫は田中哲也、警察官です。この夫婦の住まいは千葉です。
ストーリーはこの夫婦が離婚する前の2008年から始まります。すなわち、少し変わり者で庭の柿の木や実を大切にしていた大叔母の晴子の葬式が千葉ではない栃木かどこかの北関東であり、主人公はすでに妊娠しており、夫はその祝い気分でお酒を勧められ、妻の親戚縁者の葬式の場でありながら、酒を断れず酔いつぶれてしまい、帰り道は妻のかおりが運転することになります。
帰路で、かおりは人身事故を起こしたことも気づかず、結果としてひき逃げ死亡事故を起こしてしまいます。刑務所での服役中に長男の拓を出産し、刑期を終えて出所すると警察官を辞職した夫が待っていて、離婚届に署名し子どもの親権は、当然のように、元夫が持つことになります。
その後、拓が保育園を卒園する際に、かおりは卒園式にふさわしいいでたちで拓に会おうとしますが、拓と同級生で同じ保育園児の久住呂咲から拓を連れて来るといわれながら、別の園児を間違って連れ去ってしまいます。久住呂咲の母親の久住呂百合が一応の事情を把握していて警察にも必死で弁明してくれ、逮捕や裁判は免れたものの、子どもとの接見を禁じられ、追われるように各地を流れてゆくことになります。
この久住呂親子は最後までかおりの味方になってくれるキーパーソンでもあります。母親の久住呂百合は生命保険会社勤務で、かおりは子どもの拓を受取人にして多額の生命保険に入ります。犯罪歴を隠して西へ西へとかおりは移動して働き、必死になって保険金を支払い続けます。もちろん、そう平坦な道であるはずもなく、刑務所出所後、約15年、子どもの拓が久住呂咲とともに高校生になった時点で、小説はラストを迎えます。
重くてしんどい小説です。でも、ラストまで読めば救われたと感じる人もいそうです。私自身は当然にラストまで読みましたが、決して救われたとは思えませんでした。加えて、交通事故の被害者や遺族の視点がまったく欠落しているのにも大きな違和感を感じました。主人公が交通事故死させた被害者に思いを馳せるシーンも少なかった気がします。その意味で、それほど評価できる小説かどうか、私はやや疑問に感じました。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する