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2026年09月13日07:50

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赤根智子『戦争犯罪と闘う』(文春新書)

赤根智子『戦争犯罪と闘う』(文春新書)を読みました。
著者は、名古屋出身の元検事にして、現在はオランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)の所長を務めています。広く報じられている通り、先月2026年8月に、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、大統領令14203号に基づき、赤根所長を米国の制裁対象者リストであるSDNリストに追加しています。本書はその制裁前の時点で執筆公刊されています。
本書での記述順とは少し異なりますが、同じくオランダのハーグにある国際司法裁判所(ICJ)と赤根所長の国際刑事裁判所(ICC)のちがいはp.80の図2にある通りで、ざっくりいって、ICCは国連機関であり、すべての国連加盟国がメンバーとなっていて、国家間の紛争を国際法に基づいて解決すべく活動し、裁定を行っています。ですから、対象は国です。他方で、赤根所長のICJは国際条約であるローマ規定加盟国をメンバーとし、中核犯罪、すなわち、ジェノサイド犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪の4つのきわめて重大な罪を犯した個人、ロシアのプーチン大統領とかの個人を裁きます。はい、専門分野が違うとはいえ、私は初めて知ることが出来て勉強になりました。
そして、こういった4つの中核犯罪=core crimesで裁かれようとしている中には、国家元首、あるいは、元国家元首がいたりするわけです。一例として、本書でもフィリピンのドゥテルテ前大統領が上げられます。こういった中核犯罪の裁きの原点は、第2次世界大戦後のニュルンベルク裁判と東京裁判だそうです。そのあたりは専門外の私にも想像できます。
ICJの組織や詳細な活動内容、あるいは、活動実績などはお読みいただくしかありませんが、本書で強調されている点は、何といっても、軍隊の武力などを背景にした「力の支配」ではなく、「法の支配」の優先を強調していることです。世界の警察という公共財を提供してきた米国が、現在のような「力の支配」の側につく恐ろしさは多くの市民が感じているところでしょうが、本書を読めば、ロシアがウクライナに対して行っている戦争行為、また、米国やイスラエルの中東での戦争などが、いかに理不尽で「法の支配」に反するものであるかが理解できます。
また、こういったICJが行っている中核犯罪に対する国家レベルでの活動が欧州の大国、例えば、ドイツでも行われていて、日本はそういった法整備や行政上の体制整備がまったく進んでいないことにも驚かされます。まあ、GDP規模で追い抜かれても仕方ない、といったところかもしれません。

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