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2026年09月01日08:28

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ブランコ・ミラノヴィッチ『ミラノヴィッチが語る資本主義大難題』(明石書店)を読みました

ブランコ・ミラノヴィッチ『ミラノヴィッチが語る資本主義大難題』(明石書店)を読みました。
著者は、ユーゴスラビア出身のエコノミストであり、ルクセンブルク所得研究センター(LIS)上級研究員や世界銀行の主任エコノミストを務めています。主として、格差・不平等や貧困問題に着目していると私は認識しています。
本書の英語の原題は The World under Capitalism であり、2025年の出版です。著者が2014年から2024年までにブログやSubstackに発表した小論から抜粋して取りまとめています、とまえがきにありますが、私が見た限りでは2013年の記事もあったような気がします。なお、Substackというのは私はよく知りませんが、我が国のNoteみたいなものではないかと想像しています。違っていたらごめんなさい、です。索引などを別にしても500ページを超えるボリュームです。
5部構成となっていて、最後のさまざまな考察を別にすると、第�吃瑤�資本主義の下での世界、第�局瑤�不平等、第�敬瑤�グローバリゼーションと多極化世界、第�孤瑤�歴史、となっています。第�吃凜織ぅ肇襪�英語による本書のタイトルになっているわけです。きわめて多岐に渡るトピックを網羅している印象で、とても短いレビューでは済まないのですが、エコノミストの私の趣味にあわせて概観しておきたいと思います。
まず、注目すべきは資本主義経済と環境、あるいは気候変動の問題です。はい、私は現状を投影したままの将来では、2050年までにはカーボンニュートラルは世界レベルでは達成できないと考えています。個別の国レベル、例えば日本では可能かもしれませんが、地球レベルではムリだと思います。
他方で、本書では世界レベルでの脱成長には明確な疑問を呈しています。途上国の生活レベルの引上げには成長が必要であり、そうでなければ、先進国の生活レベルを極端なくらい引き下げる必要があり、80〜90パーセントの消費のカット、と指摘しています。ただ、別のところで、スーパーリッチからできるだけ多くのリソースを吸い上げる、そういった過剰な贅沢財への課税を強化する、という方向性には、肯定的な見方が示されています。
私自身の短期的な将来予想も似通っていて、途上国のための成長が必要な一方で、経済と環境のデカップリングは技術的に出来なさそう、専門外ですので大きな自信はありませんが、ムリそうな気がしますから、あるいは場合によっては、気候変動により世界文明が破綻する危機が生ずる可能性がある、と考えています。
政治面では、米国のトランプ政権、現在の政権ではなく2017年から21年の当時ながら、トランプ政権は明確に新自由主義=ネオリベラルだと主張しています。昨年ですが、2冊の文春新書を読んで、齋藤ジン『世界秩序が変わるとき』ではトランプ政権は新自由主義的な経済政策とは異なる政策を実行しようとしている、と指摘している一方で、中野剛志『基軸通貨ドルの落日』ではトランプ政権の経済政策は新自由主義に基づいている、と結論していて、私は明確に後者の方に軍配を上げました。本書でもまったく私と同じ結論が示されています。
また、不平等について論じている部分では、不平等が経済成長につながるといった主張を上げつつ、そういった統計はないとして、推奨されるものではない趣旨が明確にされています。まあ、当然です。
そして、これまた私と同意見に近いのですが、ここ20年から30年で世界的な貧困削減や不平等の是正が進んだのは、主として中国が原因であって、中国を除いた統計では世界経済の貧困も不平等もそれほど改善されていない、と指摘しています。はい、そうだと思います。中国の1980年代以降の経済政策は、かつての旧ソ連でレーニンが取った新経済政策(NEP)と大きな違いがない、とも指摘しています。この点については、レーニンのNEPをよく知らないので、何ともいえません。移民や奴隷制に関する興味深い論考もありますが、読んでみてのお楽しみです。
最後に、私のこれまた興味の範囲で、歴史の部でマルクス主義的な歴史観に対して強い支持が表明されています。歴史は経済的な余剰の分配をめぐる闘争で動いている、という歴史観です。ただし、共産主義は1世紀続いた世俗的な宗教、用語としては矛盾していますが、そのように見なしているようです。

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