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2026年08月23日07:37

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永井紗耶子『めぐる糸』(双葉社)を読みました

永井紗耶子『めぐる糸』(双葉社)を読みました。
著者は、たぶん、時代小説家であり、私は『木挽町のあだ討ち』を読んだ記憶があります。本書は、『小説推理』に連載されていた短編を単行本として出版されています。
副題は表紙画像に見えるように、「明治浪漫霊異譚」であり、舞台は明治39年=1908年の東京です。主人公の斎木啓吾は帝大生であり、木彫り職人の父親の正司、母親の幾、妹の寿々が寓居している寺、母親の実兄が住職をしている寺から離れて湯島に下宿していました。少し年長者である連翹寺子爵家の次男、若様と呼ばれ同じく帝大生の連翹寺正周の秘書あるいは書生のような存在です。
連翹寺正周は連翹寺子爵邸の蔵に書斎のような部屋があって心霊研究をしています。斎木啓吾は第1話で湯島の下宿から連翹寺子爵邸の敷地内にある書生たちの住む鳳雛寮に移ります。斎木啓吾には大きな秘密があって、この世ならざる「霊異」が視えてしまいます。母も同じ体質で、決して「視える」ことを明かしてはならないと教えられてきましたが、連翹寺正周には「視える」ことがバレてしまい、まったく視えないながら霊異に対する感覚が鋭い連翹寺正周の目となり、連翹寺子爵家の援助を受けながら帝大に通いつつ、小規模ながら気骨ある記事で人気ある銀座の新聞社の毎報社でアルバイトをしています。
前置きが長くなりましたが、本書は霊異の見える主人公のオカルトファンタジー、少しミステリ仕立ての連作短編を5話収録しています。以下順にあらすじは、まず、「ロマン髑髏」では、40年ほど前の上野の彰義隊に参加した幕臣の髑髏を拾わされる羽目になった斎木啓吾は警察の留置場に入れられて湯島の下宿を追い出され、その髑髏になった幕臣の妻と助けた女の子を探します。続いて、「祈り猫」では、廃寺で手を合わせて祈るような格好をしている猫を、斎木啓吾はアルバイト先の新聞に『奇事片々』として掲載すべく取材しますが、その猫には吉原の花魁が憑依していました。
続いて、「笑う写真」では、連翹寺正周の許婚である松木原男爵家令嬢の薫子が榊原兼人の写真館で家政婦の若い女性に写真を撮ってもらい、浅草12階の凌雲閣にて開催された写真展で展示されたところ、その写真が表情を変えるという評判になってしまいます。斎木啓吾には、その写真が松木原薫子には見えません。続いて、「霧箱の糸」では、少し時をさかのぼって、斎木啓吾が中学生のころ、連翹寺正周の父親、すなわち、連翹寺当代子爵の母親で御門跡と呼ばれる寿照尼が京都から上京し、連翹寺正周が新橋に迎えに行きますが、はぐれてしまって斎木啓吾が桐箱から延びる糸を手繰って、易者の占部峯斎の家の近くで見つけ出す、という一校生の連翹寺正周と府立三中学生の斎木啓吾の出会いが回想されます。
最後に、「生きていた令嬢」では、石炭で財を成した実業家の永富祐太朗の令嬢で、7歳の時に失踪した絹子が10年を経て現れます。永富家に出入りしている占部峯斎とともに、斎木啓吾と連翹寺正周が真相を突き止めようとします。さすがに面白く読めました。とってもオススメです。

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