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2026年08月19日07:28

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渡邊勉『調査票のなかの「戦争」』(勁草書房)を読みました

渡邊勉『調査票のなかの「戦争」』(勁草書房)を読みました。
著者は、関西学院大学社会学部教授であり、本書はシリーズ「数理・計量社会学の応用」の一環として出版されています。
冒頭に明記してあるように、本書のテーマな戦争です。終戦から6年後の1951年に京浜工業地帯の労働者1万4千人あまりに対して実施したデータを基に、国勢調査データなどと比較しながら分析を進めています。基本的に、記述統計を中心として、一般読者にも判りやすく分析している印象です。
冒頭に個票から一定の特徴ある個人の生涯を抜き出していますが、第2章以降では戦争体験、すなわち、徴兵、引揚、戦災、といった戦争体験の有無などに基づくコーホート別の分析なども示しています。地域の特性からして全国平均よりも男性の割合が高い集団の中で、戦争体験から、徴兵、引揚、戦災といった戦争体験をした労働者、逆に、戦争体験のない労働者、エリートたち、女性、のグループで個人的な人生を後づけています。しかし、個々人の状況を個票から見る限りでは、不平等については把握できません。
まず、グループとしては引揚者の割合を見ていますが、京浜工業地帯ではかなり低い割合にとどまっています。それについての合理的な解釈も示されていますが、そのあたりは本書の読ませどころですので、読んでみてのお楽しみです。また、1948年に転居や転職が一時的な増加を示している点も解釈が示されています。漠然とした理解ながら、繊維産業の比重がそれなりにある阪神圏や名古屋圏と違って、京浜工業地帯はいわゆる重工業が集積していて、大規模工場があって、男性労働者の比率が高い、という特徴は垣間見えます。
加えて、地理的な条件から東日本、東北や信越地方の出身者が少なくないのも事実です。その上で、第3章では性別、年齢、職業、産業、企業規模という属性から労働者を7つのクラスタに分けて、p.97表3-1とp.98表3-2に基づく分析を示しています。本書前半のハイライトと私は考えています。
第4章からはライフコースの分析となります。おそらく、当時は就業者の半分近くが農民でしたから、出身は第1次産業が多いのは当然です。ライフコースのパターンとともに、徴兵、引揚、戦災といった戦争体験も確率的に示されています。戦争経験者のうち、徴兵者の特徴はかなり明確だと思われますので、私自身は引揚者、逆にいえば、外地に赴いた者の特徴に興味がありましたでも、本書によれば、外地居住者と引揚者の間にかなり大きなズレがある、ということのようです。
第6章では、戦争体験者、すなわち、徴兵、引揚、戦災の戦争経験者は、非経験者よりかなり所得が高い結果が示され、本書でも「にわかには信じがたい」(p.176)とされていて、そういった謎解きもなされています。第7章の女性の戦後、終章については読んでみてのお楽しみとしますが、調べればすぐに判ることながら、終章のタイトルは「戦争とは人びとを選別するシステムである」となっています。
私が以前から主張しているように、戦争はみんなを不幸にするわけではありません。はい、戦争で得をする人がいて、そういった戦争で得をする人が戦争を始めるのです。その点は忘れるべきではありません。

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