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2026年08月16日07:34

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村上春樹『夏帆』(新潮社)を読みました

村上春樹『夏帆』(新潮社)を読みました。
著者は、日本人で3番目のノーベル文学賞が待望されていて、日本でもトップクラスの小説家です。ですので、出版社でもこの作品への期待は大きいようで、特設サイトが開設されています。
小説の主人公はタイトル通りに夏帆です。現在はさいたま市となった浦和にある小児科の開業医の1人娘として育ち、美大を卒業して絵本やデザインで生活している26歳です。とびきり美しくも賢くもなく、ただ少しばかり好奇心が強い、という性格です。足立区の花畑に住んでいたのですが、ブラインドデートでBMWのモーターサイクルに乗るお相手の佐原から「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」といわれてしまいます。
それで、まあ、何と申しましょうかで、お告げのようなものがあって、武蔵境に引越します。JRの駅からかなり離れた一軒家を借り、その地下に住みついたありくい、そうです、表紙にシルエットのあるありくいの奥さんからの情報に基づいて、ファンタジーの世界が繰り広げられます。
ただし、このファンタジーの世界は、『街とその不確かな壁』にはなく、『騎士団長殺し』にさかのぼるような、やや「暴力的」な傾向のある村上作品のファンタジーです。もっと前の作品を持ち出せば、『海辺のカフカ』につながっているともいえます。他方、ファンタジーや幻想ではなく、現実の物語から外れた主人公の夏帆が心のなかで体験している感情のメタファーという見方もできようか、という気がします。
その意味でも、村上春樹によるこの傾向の小説の頂点は、明らかに、『海辺のカフカ』だろうと思います。特に、暴力的という意味では、本書におけるとぎやの店主や母親に取り憑いたアマゾンの怪物と対決するシーンは『1Q84』で主人公の青豆が教祖を倒すシーンと重なります。
最後に、最近、「ドライブ・マイ・カー」がひとつの話題になって、村上春樹作品の映像化が進んでいるような気がしますが、この『夏帆』を映画あるいはドラマにすると、20代半ばの主人公はどなたになるのでしょうか。成瀬あかりを舞台で演じた山下美月ではなく、私は勝手に藤野涼子を推したいと思います。

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