新井潤[編著]『現代経済学の展開』(日本経済評論社)を読みました。
編著者は、龍谷大学経済学部准教授であり、チャプターごとの著者にも龍谷大学の関係者が多く含まれています。というのも、本書は、龍谷大学社会科学研究所の研究プロジェクト「非線形力学系の新しい成果を応用した複雑な経済変動の解明と将来予想」の成果の一部を取りまとめたものだからです。
私は頭の回転が鈍くて、いわゆる比較静学的な分析がもっぱらで、動学の展開は不得手なのですが、時にはこういった経済書も読んでいます。はい、完全な学術書であり、大学学部レベルの学生では読みこなすのが苦しそうな気がします。本書冒頭では数式がいっぱい展開されていますので、そもそも、私が接している学生諸君の中には、それだけでアレルギー症状を呈する人がいそうな気すらします。
基本は、実数上で定義されたロジスティック方程式から拡張させ、複素平面で展開される複素ロジスティック方程式に基づく理論モデル分析、実証分析を6章集めています。第1章では、マルサスの人口問題を解こうとした微分方程式、さらに、フェルフルストのロジスティック方程式から始めて、その複素ロジスティック方程式を簡単に解説した後、コロナの感染拡大と終息についてモデル化しています。本書でも指摘しているように、年期の入ったSIRモデルが感染拡大と終息に活用されてきましたが、複素ロジスティック方程式の解の構造からコロナの感染者数の広がりを追おうと試みています。
第2章が私がもっとも興味あった公債の持続可能性を取り上げています。人口一定という仮定が少し気にかかるものの、公債=資本ストック比率を一定とするターゲットと、現在の高市内閣が取っている公債残高のGDP比率をターゲットとするケースを比較しています。結論として、前者の公債=資本ストック比率をターゲットの方が、相対的に高い消費-資本比率が実現できることを示しています。
第3章では、個人のエネルギーに関するリテラシーがZEH型の省エネ住宅の選考に与える影響について、選択実験のアンケートを基に、ランダムパラメーターロジットモデルと潜在クラスモデルによる実証的なコンジョイント分析を行っています。第4章では、中央政府と地方政府が複占理論を応用したシュッタケルベルグゲームにおいて、それぞれリーダーとフォロワーになる中央集権的リーダーシップゲーム、それとは逆の分権的リーダーシップゲームを考え、前者の場合に地域間人口配分と地方公共財供給が最適、すなわち、パレート最適な資源配分が達成されると結論しています。
第5章では、レオンティエフ型2部門最適成長モデルを応用して、戦後日本の復興経路を分析し、最後の第6章では、環境意識の高い消費者やCSR活動に熱心な企業の存在が資源リサイクルに有効である一方で、持続可能性の観点からは十分ではない、という結論が導かれています。最後の方の2章の詳細は、読んでみてのお楽しみながら、このレベルの学術書を読みこなすにはかなりの能力が必要かもしれません。
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