小塩真司『「数値化」中毒』(PHP新書)を読みました。
著者は、早稲田大学文学学術院教授であり、ご専門はパーソナリティ心理学、発達心理学だそうです。
本書のタイトルを見て、いわゆるグッドハートの法則、すなわち、「ある指標が目標となると、それはもはや良い指標ではなくなる」(p.69)という経済学の領域だろうと私は思っていて、心理学の専門家が論じている点を疑問に思っていました。第6章が、そういった私の疑問を少し解消してくれて、要するに、単一の指標にはバイアスがつきものだから、多様な見方でもって評価しましょうね、という結論なんだろうという気がします。
ですので、大学の合否判定や偏差値による評価など、学力に関する測定がそれなりの割合を占めています。加えて、第3章ではグッドハートの法則を補完するようなキャンベルの法則、すなわち、定量的指標が重視されればされるほど、不正行為や歪んだ行動を引き起こしやすい、という見方です。これも、全国学力テストにおける不正行為や歪んだ行動とあわせて引き合いに出されています。
ただし、他方で、何らかの指標が必要なケースも有り得る、と考える読者が多いことを考慮し、本書のきわめてすぐれた点として、計測して数値化した指標による判断に代替する方法を提案しています。それが、多様な人物を選抜する方法としてp.168以降で論じられているくじ引きです。はい、ランダムサンプリングによる選抜です。ただし、無条件にくじ引きで選ぶのではなく、一定の条件を満たす範囲からくじ引きで選ぶ、という主張です。
ただし、そうすると、イタチごっこで、その一定基準を満たすかどうかが、またまた、本書で指摘しているような指標になりかねない恐れがあると私は思わないでもないのですが、私はこのくじ引き方式はかなり重要な指摘だと考えています。反対意見が多いであろう点は理解していますが、例えば、選挙なんかにも有効と考えていたりします。
人物選抜だけではなく、何らかの選択をする場合に、くじ引きが有効かどうかはケースによると考えるべきです。例えば、人物選抜のカテゴリーで考えれば、大学入学者や新規採用者などは一定範囲内でのくじ引きによる選抜が妥当な場合がありそうな気がしますが、結婚相手であれば熟慮に熟慮を重ねる必要があるのは言うまでもありません。
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