東田啓作[編著]『グリーンウォッシュの経済分析』(中央経済社)を読みました。
編著者は、関西学院大学経済学部教授であり、本書は、関西学院大学産研叢書として出版されています。タイトル通りにグリーンウォッシュについて経済学的に分析を加えています。
本書でも何度か指摘されているように、グリーンウォッシュは、通常、Delmas and Burbano (2011) "The Drivers of Greenwashing" で定義されているように、"poor environmental performance and positive communication about environmental performance" 「環境パフォーマンスが低いにもかかわらず、それについて肯定的なコミュニケーションを行うこと」とされていて、要するに、環境負荷の低い企業活動をしている、あるいは、そういった製品やサービスを提供しているという誇張された広告宣伝などを行っている、という意味です。
どうして困るのかというと、第1に環境への意識高い消費者の選択を歪め、第2に環境配慮という名の高コスト負担を強いる、ということです。もちろん、これら以外にも弊害はあります。逆に、環境配慮について過小にコミュニケーションを取る、あるいは、まったく公表すらしないというグリーンハッシュも、EUのグリーンクレーム指令 Green Claims Directive から生じるようになっていると、本書では指摘しています。
本書は、割合と短めの10章ほどのチャプターから構成されていて、グリーンウォッシュについて、いくつかのチャプターで定量的な評価と数理モデルによる解析的な評価を試みています。第1章は序章的な位置づけで、いわゆるエディトリアルを提供しています。
最初の方の2-4章では、グリーンウォッシュほかの環境情報の認知、さらに、環境意識について分析しています。特に、第4章で消費者が環境配慮行動を取ったことによるウォームグロー効果の分析が私には興味深かったです。ウォームグロー効果とは、何かいいことをしたという内面的な報酬を指します。このウォームグロー効果が存在する場合、価格上昇が生じて消費量と消費効用がともに減少し、これがウォームグロー効果を上回ることから逆に消費者の利得が低下する可能性がある、という結果を数理モデルで示唆しています。
5-7章では、企業がどうしてグリーンウォッシュ行動をするのか、という核心部分の分析をしています。第7章では、EUのグリーンクレーム指令によって生じたグリーンハッシュについても数理モデルにより分析しています。8-10章では、グリーンウォッシュについて、かなり突っ込んだ発展モデルを考えています。規制に対するロビー活動、循環型社会におけるグリーンウォッシュの位置づけ、国際間の認証問題がグリーンウォッシュに及ぼす影響などです。
私自身の環境経済学の理解度はまだまだだと認識しているのですが、正面切っての環境問題ではなく、こういったニッチなグリーンウォッシュも少し勉強してみたい、という気になりました。
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