小峰隆夫ほか『スマートシュリンクへの道』(中央経済社)を読みました。
著者は何人かいるのですが、うち小峰教授は私の役所の先輩であり、研究所勤務の折には上司としてお仕えした経験もありますが、ほとんど接点はなかった気がします。
本書は、中曽根康弘世界平和研究所における経済社会研究グループの成果が土台になっているようです。タイトルから容易に理解できるように、人口減少に対して抑制したり反転させて人口増加を目指すのではなく、人口減少を受け入れて適応した上で、どのようなシュリンク=縮み方が望ましいのかを本書では議論しています。
日本経済の実績として、人口が減少しているにもかかわらず、GDPで計測した経済規模は拡大しており、決して人口減少がそのまま経済規模の縮小につながるわけではないと強調しています。その上で、1人当たりGDPやウェルビーイングの観点から、スマートにシュリンクする方向を目指す重要性が強調されています。さらに、人手不足への対応、企業経営、社会保障の持続性の維持、地域のスマートシュリンク、気候変動などのチャプターごとに専門家が議論を展開しています。
私自身は基本的に同じ考えであり、人口減少を抑制することはともかく、反転させて人口増加を目指すのは、むしろムダが多い可能性が否定できないと考えています。ただ、冒頭のp.8では人口減少や少子化を構造改革のきっかけにすることを考えていて、3点上げています。第1にメンバーシップ型からジョブ型へのの雇用の転換、第2と第3で男女の役割分担の見直しや女性参画の拡大などですが、これらについては本書では取り上げられていません。実は、同じ著者による小峰隆夫『地域と人口減少の経済学』(中公新書)という本があるのを知り、大学生協で注文したところなのですが、ソチラで扱われているのかもしれないと期待しています。
取りあえずの評価としては、現状分析は十分なされており、政策の方向性も私は大いに同意できるものと受け止めています。ただ、本書は書籍としてはボリューム的に十分ではなく、政策の詳細を分析した処方箋がそれほど充実しておらず、今後の課題という面は否定できません。ですから、第3章のウェルビーイングと経済の課題を考えている部分でも、p.76からの生産性向上のために基礎的成長率の引上げ、なんていわれても、「何それ」あるいは「トートロジー」という受け止めは少なくないものと私は想像しています。
もうひとつは、経済学的分析に基づいていますので、結局、超長期の対応の部分はできていない、と考えるべきです。超長期の対応、というのは、人口減少に適応的に対応するとしても、全国レベルで考えるとしても、何らかの地域レベルで考えるとしても、私はどこかに最小限維持すべき人口規模があると考えています。
極端な見方かもしれませんが、おそらく100万人くらいまで人口が減少すると、国防や産業など、国家としての活動は維持できなくなると私は考えていて、根拠はありませんが、おそらく、2000-3000万人のあたりに critical value がありそうな気がしています。ですから、どこかで人口減少を食い止める必要があるわけで、「適応戦略」が未来永劫に有効なわけではありません。ただ、経済学のスキームでこういった超長期の分析をするのはムリがあります。別の学問分野の課題だという気がします。
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