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2026年06月01日07:41

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脇田滋『いまどうするか日本経済』(ちくま新書)を読みました

脇田滋『いまどうするか日本経済』(ちくま新書)を読みました。
著者は、東京都立大学経済経営学部の教授です。私は何度か役所のセミナーなどでお会いしたことがあります。実に、主流派のエコノミストだと受け止めています。
本書の結論は、p.302にあるように、「家計軽視・企業重視の政策がマクロ経済の基礎体力を弱めてしまった」という点につきます。はい、私もその通りだと思います。
冒頭でも、本書の視点として、「利益剰余金を通した企業の貯蓄主体化が日本経済の長期停滞の主因」を上げています。マクロ経済政策、それも景気浮揚を目指す政策の主眼は、貯蓄過剰主体の貯蓄を低減して貯蓄投資バランスを投資に向かわせることです。その意味で、日本ではバブル崩壊からしばらくして企業が貯蓄過剰になって投資をしなくなったため、政府と海外が大赤字を出してバランスを取っている、取らざるを得ない形になっています。
ただ、だからといって米国の標準モデルを日本に当てはめることを問題と考える本書の見方には、私は賛同できません。経済モデルを正しく日本的に修正すればいいだけで、バックグラウンドのモデルは決して誤っていないと私は見ています。そのモデルに従った本書のエコノミストのカテゴライズがおもしろいのですが、物価を重視するリフレ派、生産性を重視する構造改革派、そして、やや構造改革派に近いながら役所だけでなくアカデミアにも少なくない財政重視派に分類しています。
本書の見立てでは、日本の長期停滞の一因はメインバンク制の崩壊にあるということで、メインバンクを頼れなくなった企業がせっせと内部留保の積増しに走り、貯蓄過剰主体になったのがひとつの要因と指摘しています。そうかもしれませんが、逆に、金融市場の未成熟も忘れるべきではない、という気はします。メインバンクからオーバーボロウしていたのが、自己資本比率に関するBIS規制もあって、もちろん、バブルが崩壊して、さらに、国際化が進み銀行に頼れなくなった企業が合理的な行動として内部留保を積み増すというのはありえます。
ただ、アベノミクスでそれを助長し、消費税率を引き上げては、その財源でもって法人税率を引き下げるという形で、本書や私から見れば逆向きの経済政策を取ったものですから、日本経済の停滞が長期化したのは事実であろうと考えます。
アベノミクスが想定したトリクルダウンがまったく生じなかったのは歴史的事実ですし、企業収益から派生する株高など、高所得者層の収入が増加した一方で、低所得者層が本書で「奥田の一喝」(p.83)と指摘しているような賃金抑制があって、さらに、雇用の非正規化が進んで、経済的格差が拡大したのも新自由主義的なアベノミクスの大きな弊害のひとつでした。
ほかに、労働生産性計測上の問題、海外M&Aの失敗、日経新聞について政府の「上意」のプロパガンダ機関化、などなど、読むべき主張が満載です。ただ、タイトルの問いには正面から回答できているとはいえません。診断はとっても正確でオススメですが、処方箋はどうなのでしょうか?

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