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2026年05月23日07:44

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法月綸太郎『法月綸太郎の不覚』(講談社)を読みました

法月綸太郎『法月綸太郎の不覚』(講談社)を読みました。
著者は、新本格派と呼ばれるミステリ作家であり、我が母校の京都大学のミス研ご出身です。
本書は、作者と同じ氏名の法月綸太郎が父親の法月警視からの情報を下に真相解明に挑むというシリーズの最新作です。短編を3話ともう少し長い中編くらいを1話収録しています。ただ、短編と中編だけながらすべて殺人事件を扱っています。
収録順に、まず、「心理的瑕疵あり」では、よろずジャーナリストの飯田から綸太郎に持ち込まれた案件で、ライター仲間の松岡が、首吊り自殺があったと噂の戸越銀座近くの格安アパートに入居したところ、首を吊って死んでいるところを発見されます。東京創元社のアンソロジー『あなたも名探偵』に収録されていましたので、私は既読でした。「被疑者死亡により」では、保険のファイナンシャルプランナーから、養父の交換殺人の疑いをかけられたと綸太郎が相談を受け、別の交換殺人、また、殺人計画が明らかとなります。これも、講談社のアンソロジー『推理の時間です』に収録されていましたので、私は既読でした。「次はあんたの番だよ」では、杉並区善福寺の資産家老女殺しの事件があった2日前に、多摩川河川敷でジョギング中のランナーが殺された老女とそっくりな幽霊のようなものを目撃していました。これも、何かのアンソロジーに収録されていたようなのですが、私は未読でした。
最後の中編「平行線は交わらない」は書き下ろしで、これはなかなかいい出来だと思います。事件の発端は、三鷹にある和菓子店の店主である橘迪夫の殺人事件です。そして、その前年の同じ日に経営コンサルタントの松島興賢も殺されていました。和菓子店主の橘迪夫は、本郷にある老舗和菓子店の職長から独立しており、その老舗和菓子店では跡目をめぐって、先妻の子である長男の谷沢宗一郎と後妻の子である次男の谷沢基次郎が対立し、結局、老舗の方は基次郎が継いで、宗一郎はスカイツリー近くの向島に洋菓子の要素を取り入れたスイーツ店を開業しています。宗一郎の妻である美雪はスイーツの開発センス豊かで、叔父の経営コンサルタントの松島興賢の助けもあって宗一郎の店もそれなりに繁盛しています。タイトルにあるのは「平行線」なのですが、実は、殺された橘迪夫はそもそも谷沢基次郎の母親である後妻と仲が悪く、しかも、長男の谷沢宗一郎が妻の美雪の意見に従って洋菓子の要素を盛り込んでいることにも反感を覚えています。谷沢宗一郎と谷沢基次郎はもともとが跡目争いで対立厳しく、要するに、長男次男と元職長の三者で互いに反目し合っていたわけです。とても複雑な事件を法月綸太郎が真相解明に挑みます。
ということで、いかにも、新本格派らしい論理的な謎解きが楽しめます。最後に、ミステリとしての謎解きは十分楽しめるレベルなのですが、本家クイーンの時代には考えられなかった問題で少し困難をきたしているような気がします。すなわち、コンプライアンスとネット界隈への接し方です。まず第1に、コンプライアンスで、警察の捜査情報を家族とはいえ部外者に漏洩することについて、いろいろと著者なりに考えているようですが、やや混迷している印象です。同様の点は有栖川有栖作品にも当てはまりそうな気がしますが、火村准教授にはあくまで警察サイドから事件解決を期待して情報を流す、という形を取っている点は違うかもしれません。次に第2に、ネット界隈への接し方については、YouTubeへの配信について、少しスベっています。この点については正解はないのかもしれません。

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