読売新聞大阪本社取材班『絶望の凶弾』(中央公論新社)を読みました。
著者は、新聞社の取材班です。表紙を見ての通りで、2022年7月8日の参議院選挙のさなかに、安倍晋三元総理が奈良で暗殺された事件から、その銃撃犯である山上徹也に対して奈良地裁が求刑通りの無期懲役の判決を下すまでの1294日の取材結果を取りまとめています。山上徹也だけを追っていますが、管見の限り、この事件に関するもっとも信頼性の高いルポルタージュだと思います。
旧統一協会の妄信的な信者出会った母親、自殺した父と兄、もっとも熱心な援助を寄せていた父の兄である伯父、などなど、山上徹也を取り巻く親族との関係を明らかにし、親族や働いていた会社の関係者などへの取材を通じて明らかになった山上徹也の実像が、決して十分とは言えないながらも、明らかにしようと試みています。
ただ、まだ判決が確定したわけではないという意味で裁判が終わったわけではありませんし、旧統一協会の解散問題も決着していません。戦後初めての総理大臣経験者の暗殺という事件の全貌、特に、旧統一協会の闇の部分の真相解明はまったく不十分です。政界との関係も明らかにされていません。
最後に、本筋から離れて事実関係ながら3点だけ示すと、まず第1に、銃撃された安倍元総理に最初に駆けつけた、というか、呼ばれたのは、私の高校の同級生です。薄々漏れ聞いてはいました。そして第2に、本書もそうですが、旧統一教会と表記されています。私は旧統一協会と表記するのが正しいと考えています。本書p.32でも言及されている通り、文鮮明によって1954年に設立されたのは世界基督教統一神霊協会でした。第3に、本書では、旧統一協会の政治部隊である勝共連合にまったく言及がありません。こういった点を含めて、本書の取材記録もそのまま鵜呑みにするのではなく、それなりに批判的な目でもって読まれるべき本である可能性を指摘しておきたいと思います。
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