mixiユーザー(id:68108846)

2026年04月21日07:44

39 view

松尾匡『「上」vs.「下」の経済学』(地平社)を読みました

松尾匡『「上」vs.「下」の経済学』(地平社)を読みました。
著者は、立命館大学経済学部教授であり、すなわち、私の同僚教員です。したがって、というわけでもないのでしょうが、本書をご寄贈いただいています。
ご著者と違って、私は政治向きのお話は理解がはかどりませんし、第1章の総選挙結果の解説についても、何ともいえません。世の中が中道と左右のポピュリズムの3極に分かれるかどうかについても、そこまで単純化できるのだろうか、と疑問に思わないでもありません。
したがって、経済や経済学に限定はしませんが、私が理解できる範囲のレビューになります。まず、タイトルについて、明快に第2章で、世の中を横に切って上下に分けて認識し、下に味方するのが左翼、世の中を縦に切ってウチとソトに分けて認識し、ウチに味方するのが右翼、という見方を示しています。p.57 図2-1で図解しています。はい、これは私もまったくその通りだと思います。私が理解できる範囲で、第4章の現在の高市政権の経済政策についても、その通りで、政権=権力者のお好みにしたがって資源動員先を決めて、農業や中小企業は切捨ての憂き目を見ていることも事実です。
ただ、口実としている経済安全保障が、例えば、「通商白書」で見る限り、数年前の「通商白書」2022年版では、第��-1-2-25表の重要品目等の依存度、国内代替可能度、あるいは、それに続く第��-1-2-26図の輸入相手国・地域などで、国内生産比率がパソコンや携帯電話で低く、中国からの輸入依存度が高い、として、いかにも「中国への輸入依存がリスク」といわんばかりの見方だったのが、本書で指摘する地域帝国主義の観点から明らかにしているように、米国トランプ政権こそが我が国の経済安全保障を脅かす元凶、という現実を見るべきと私は考えています。私の記憶にあるのは、Financial Timesに掲載されたコラム "Trump, Putin, Xi and the new age of empire" にあった世界を3人で分割する風刺画です。
ただし、いくつか指摘しておきたい点もあります。まず第1に、ウチとソトに分ける右翼の財政拡張路線と上と下に分ける左翼の反緊縮財政の違いが、たぶん、よく読めば頭のいい人には判るのかもしれませんが、私には判然としませんでした。要するに、歳出については、大企業や軍備につぎ込むのが右翼の財政拡張政策で、社会保障や教育などの国民生活に資源配分を手厚くするのが左翼の反緊縮財政、という結論なのだと思いますが、それだけなのでしょうか。確かに、歳入面での累進課税の強化は重要ですが、先進国で累進課税を取っていない国なんてないわけで、どの程度の累進度が必要なのでしょうか。労働配分の精緻な計算結果に比較すると、やや物足りない気もします。
第2に、その労働配分=労働の割当てだけではなく、資本ストックも合わせてみた産出=アウトプットで考えるべきではないか、と私は考えています。例えば、将来的に需要が拡大することが明らかな介護サービスの供給を増やすには、確かに短期には労働配分を増やす必要が高いという点は理解しますが、より長期には資本ストックに体化される技術革新も含めて、労働だけに必要なアウトプットの増加を依存するのではなく、生産要素である労働と資本ストックの両方から手当てすべきではないか、と私は考えます。
第3に最後に、私はこういった左派の経済政策を実現するには、それなりの自覚した勢力の行動が必要と考えています。もはや、かつてのソ連や中国のような暴力革命でプロレタリアート独裁、なんてのは絶対に出来っこありませんから、今では選挙による政権交代がもっとも現実的と考える国民が多いかもしれません。しかし、私は選挙に基づく政権交代ですら、日本においては、実現性が怪しいと思っています。ですので、3.5%ルールを提唱したエリカ・チェノウェス教授の『市民的抵抗』で示されている市民運動が現時点では、ひょっとしたら、選挙よりも可能性が高い政権交代手段であるように私は見ています。ただし、それほど、自信はありません。批判者によっては、自覚した非暴力の3.5%の市民的抵抗が政権交代につながるなんて、1997-98年のインドネシアとか、2010-12年のアラブの春、といった途上国や新興国レベルのお話で、民主主義の進んだ先進国である日本ではありえない、という見方もありますが、日本の民主主義はホントに欧米先進国並みか、という疑問はないのでしょうか?

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する