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2026年03月24日08:50

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矢作弘『社会主義都市ニューヨークの誕生』(学芸出版社)を読みました。

矢作弘『社会主義都市ニューヨークの誕生』(学芸出版社)を読みました。
著者は、龍谷大学名誉教授であり、著書・翻訳書を見る限り、都市関係のご専門のような気がします。芥川賞作家である平野啓一郎のご推薦が表紙画像の帯に見えます。
その表紙画像は米国の自由の女神であり、当然ながら舞台はニューヨークです。昨年当選したゾーラン・マブダニ市長にスポットを当てています。そして、これも表紙画像に見えるように、ニューヨークを暮らしやすい都市 A City We Can Afford にするというのが選挙公約となっていました。
本書ではまず、マブダニ市長のプロファイルから始めています。広く報じられている通り、イスラム教徒であり、インドからの移民、そして、何よりも社会主義者、として紹介されています。その個人的な生い立ちとしては、米国アイビーリーグの一角を占めるトップ校のひとつであるコロンビア大学教授を父に、アカデミー賞にもノミネートされた映像作家・監督を母にしており、ウルトラセレブでヒューマニストの両親だったそうです。決して、労働者階級の出身ではありません。
選挙戦はすっ飛ばして、本書第4章の政策を見ると、家賃管理とフリーバスをはじめとして、子ども保育の無償化、市営のグローサリーストア、最低賃金の引上げ、それらの財源として富裕層や大企業への増税が上げられています。
すっ飛ばした選挙キャンペーンや政策の詳細についてはお読みいただくしかありませんが、私の感想を2点付け加えたいと思います。まず、言及してある政策は、まさに、社会主義に向かうものだと考えるべきです。ピケティ教授が脱商品化と呼び、斎藤幸平准教授がコモンの拡大という場合、商品として市場で価格をつけて購買力としての貨幣を持っている人、自然人であれ法人であれ、に配分されるのではなく、必要とされる人に配分するのが社会主義的な第1歩です。
日本では、部分的に対価を支払っているとはいえ、教育と医療が商品として市場で配分されているわけではありません。少なくとも、株式会社などの営利企業が供給することは禁じられています。こういった社会的な供給を教育と医療に続いて、家賃管理により住宅に対して、また、フリーバスにより交通に対して、それぞれ拡大する方向性が明らかに見えます。
第2に、日本でも1960-70年代くらいに国政選挙ではなく、地方選挙において、いわゆる革新自治体というものが拡大した歴史があります。私の故郷である京都府では蜷川知事ががんばっていましたし、京都府に続いて、美濃部東京都知事や黒田大阪府知事などが誕生し、横浜には飛鳥田市長がいました。ニューヨークのマブダニ市長から米国でもこういった動きが始まる可能性があるのだろうと私は受け止めています。
本書第5章で展開されている20世紀前半の米国における下水道社会主義なんかも参考になりそうです。他方で、日本では1980年代に新自由主義的な政策が採用され、革新自治体はすっかり影を潜めましたが、米国でも、日本でも、地方から社会主義的な動きがこれから見られる可能性が十分ある、と私は期待しています。その観点から、4月5日投票の京都府知事選挙について、北陸新幹線の延伸にも関係して、私は大いに注目しています。
最後の最後に、どうでもいいことながら、本書ではマブダニ市長の経済政策を「マブダニノミクス」と表現していますが、私はニューヨーク・タイムズ紙か何かで、ファーストネームを取ってゾーラノミクス=ZORANOMICS としているのを見かけたことがあります。

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