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2026年03月03日07:27

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ダニエル・チャンドラー『自由と平等』(早川書房)を読みました

ダニエル・チャンドラー『自由と平等』(早川書房)を読みました。
著者は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)を本拠とする経済学者・哲学者です。LSEの結束資本主義プログラムの研究部長も務めています。本書は、ロールズの政治哲学を解説し、それに基づいて、自由と平等を論じています。2部構成となっており、第1部でロールズの政治哲学をひも解いた後、第2部でその実践、政策としての実現策を模索しています。
まず、第1章冒頭p.41でロールズの正義の2つの原理を示しています。これ自体が、本書でも指摘しているように十分難解なのですが、特に重要な第2の原理を「格差原理」と呼んでいて、要するに、社会的および経済的不平等は公正な機会均等の下で、社会で最も恵まれないメンバーの最大の利益をもたらす必要がある、ということで、後者はマキシミン原理です。
そして、続く第1部と第2部で広範なテーマについて議論が展開されています。少し私の専門外の部分もありますので端折って、いくつかの論点だけに集中してみたいと思います。まず、軽く想像されるところですが、現在の日本を含む欧米先進国で「機会の平等」とされているものは不徹底であると結論しています。当然です。ただ、教育の機会の平等について、私は少し異論があります。すなわち、有償学校に対して、少なくとも公的補助はやめて、むしろ禁止すべきと結論しています。もしも、学校教育はすべて無償にすべき、という意見であれば私も賛成です。ただ、あくまで推測ながら、著者は英国人ですので、私の想像ながら、英国的なパブリックスクールを有償学校として念頭に置いているのであれば、私は逆の方策もあり得ると考えます。すなわち、有償学校と同等の教育を可能とするために、有償学校以外の学校に潤沢な公的補助を提供する、という考えです。
実は、私の地元からほど近い大津市は待機児童数が全国ワーストなのですが、何と、市立幼稚園教員の給与を保育士水準に合わせて賃金引下げを行うことを決定しています。私が見たのは毎日新聞の記事「幼稚園教員、賃下げへ 保育士と均衡図る 大津市が給与見直し条例案」と、それを基にした集英社オンラインの記事「『違う。逆。保育士の給与を上げるんだ』待機児童数全国ワーストの大津『幼稚園教員"賃下げ"で炎上』市の狙いは人材流動化も…現場は離職危機」なのですが、本書の有償学校に関する主張は大津市と同じです。集英社オンラインの記事のタイトル通りであり、逆の方向が望まれます。
本書の独自の主張ではありませんが、市場経済における分配の結果については興味深い議論を展開しています。すなわち、累進課税などで平等化を図るとともに、ロールズの財産私有制資本主義を基にして、貧しい人に対して事後分配を実施するのではなく、事前の分配を実行する、というものです。アトキンソン教授などが『21世紀の不平等』で資産提供を論じていますし、同じラインの議論だと思います。もちろん、本書では、ストックとしての資産だけではなく、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の必要性も論じています。
極めて多岐に渡る議論が展開されていますし、私の専門外の分野も少なくありませんので、ぜひとも多くの方が手に取って読むことを願っています。
最後に、こういったテーマの本ですので、本書を読むことなく、ひょっとしたら、私のこのレビューすらも適当に流し読んだだけで、延々と自説を展開するコメントが付くことを予想しています。許容しますが、適切な返信をしたいと思います。

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