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2025年12月30日09:12

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辻村美月『嘘つきジェンガ』(文春文庫)を読みました。

辻村美月『嘘つきジェンガ』(文春文庫)を読みました。
著者は、とっても人気の小説家です。私は『かがみの孤城』などは読んでいますが、それほどたくさんの作品を読んでいるわけではありません。
本書には、短編といってもいいのでしょうが、やや長い中編くらいの3話が収録されていて、タイトル通りに、嘘や詐欺といったテーマのもと、嘘をつく方とつかれる方の両方の視点から人間というものの不安定性を浮き彫りにしています。
収録順に、あらすじを紹介すると、まず、「2020年のロマンス詐欺」では、地方から東京の大学に入学して下宿を始めた途端にコロナ禍で生活が一変し、入学式も取りやめ、バイトも見つからない男子学生が主人公であり、昨今でいう「匿・流」=匿名・流動型犯罪の闇バイトほどではありませんが、ネットを通じたロマンス詐欺でアルバイト代わりに収入を得ようとします。
続いて、「五年目の受験詐欺」では専業主婦が主人公で、優秀な長男に比べて、やや伸び悩み気味の次男の中学受験に際して、教育コンサルタントの特別紹介の事前受験で夫にも内密に100万円を支払った過去があり、次男が高校生になった5年後にそれが詐欺であったことを知ります。「あの人のサロン詐欺」では、崇拝する漫画原作者のふりをして20代半ばから10年に渡ってオンラインサロンでファンと交流している「子ども部屋おばさん」が主人公です。漫画原作者が漏らした近くに見える東京スカイツリーの建設の進捗から、なりすましを思いついたのですが、何と、ご本人がハレンチ罪で逮捕されてしまいます。
はい。どの短編も嘘や詐欺で長らく保たれていた均衡が崩壊する時点がやって来て、やっぱり、嘘や詐欺はそう長くは続けられない、という点が強く感じられます。ただ、そういった虚構の世界に入っていく人間の弱さといったものにも真剣に立ち向かって、何らかの解決を示している点が評価できる短編集です。
本書は、オチのない純文学ではありませんから、何らかのオチはあります。基本はハッピーエンドと受け止める読者も多いのでしょうが、中には、いい終わり方ではない、と考える読者もいそうな気がします。
最後の最後に、本書は2022年に単行本として出版されていて、私も最初の「2020年のロマンス詐欺」は何かのアンソロジーで読んだ記憶がありますが、今年になって文庫本化された最大のポイントは直木賞作家の一穂ミチの解説ではないだろうか、という気がします。その巻末の解説まで含めて、本書はいい作品だと感じました。

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