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2025年12月28日08:46

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宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社)を読みました。

宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社)を読みました。
著者は、小説家であり、京都大学文学部のご出身です。本書は成瀬あかりを主人公とする『成瀬は天下を取りにいく』と『成瀬は信じた道をいく』に続くシリーズ第3作、最終巻です。第1作の『成瀬は天下を取りにいく』が本屋大賞を受賞したこともあり、出版社では本シリーズの特設サイトを開設しています。
本書では、成瀬あかりは膳所高校を卒業して京都大学理学部に入学しています。経済学部だったら、私の後輩だったのですが、チョッピリ残念です。6話の短編からなる連作短編集です。
収録順にあらすじは以下の通りです。まず、「やすらぎハムエッグ」では、入学式で知り合った坪井さくらが視点を提供します。表紙画像は入学式に際して、おばあちゃんの着物を成瀬が着ているという設定です。坪井はほのかに思いを寄せる高校の同級生と同じ京大を目指し合格しますが、彼は東大に志望校を変更していました。しかし、京大に来て同じ理学部1回生の成瀬と知り合います。続いて、「実家が北白川」では、農学部1回生で家が北白川にある梅谷誠が視点を提供します。梅谷は、達磨研究会なる森見登美彦の京大文学をこよなく愛するサークルに入会し、成瀬と坪井もいっしょになります。サークル会長の工学部2回生の木崎輝翔からもらったガイドブックを基に成瀬は京都を極めようとします。
続いて、「ぼきののか」では、私の勤務する立命館大学の学生、ぼきののか、こと、田中ののかという簿記の検定試験をテーマにした動画配信者が視点を提供します。ぼきののかは、簿記2級に落ちていたことを視聴者に正直にいえなかったのですが、北野天満宮で成瀬といっしょになり、また、視聴者から簿記2級不合格の事実を暴露されて炎上します。続いて、「そういう子なので」では、成瀬あかりの母親の美貴子がストーリーを進めます。地元のパトロール活動をしていた成瀬に、びわテレ「ぐるりんワイド」のプロデューサーから「びびっと!びわびと」への出演を依頼され、家にも取材に来て母親の美貴子もテレビに登場します。
続いて、「親愛なるあなたへ」では、競技かるた高校選手権で成瀬と出会った西浦航一郎がストーリーを進めます。西浦は京都の大学、たぶん、京大ならざる京都の大学に入学し、広島を離れて下宿しているのですが、多忙を極める成瀬にはなかなか会うことがかなわず、鳩居堂のレターセットで成瀬に手紙を書いて文通しています。最後に、「琵琶湖の水は絶えずして」では、島崎みゆきが東京から成瀬に呼び出されてストーリーを進めます。すなわち、盲腸で入院したため、成瀬はびわ湖大津観光大使の仕事を篠崎かれんとともに果たすよう島崎に依頼します。この最終話では、オールスターキャストで、今までに成瀬と関わった多くの人物がズラリと登場します。
最後に、本書は京大や京都の地理に詳しくなくても、それなりに楽しむことは十分可能です。主人公である成瀬あかりのキャラが読ませどころだからです。でも、私自身が京大OBでもあり、京大や京都の地理にそれなりに詳しいいわけで、もしもそうであればもっと楽しむことのできる小説だという気がします。鳩居堂は銀座にもありますが、寺町にもあります。達磨研究会がもっとも典拠が豊富そうな気がします。森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』は京大文学のひとつでしょうし、達磨研究会のこたつと鍋は、明らかに、森見作品の「韋駄天コタツ」や、それをまねた2018年2月の「京大こたつ事件」を下敷きにしています。「京大こたつ事件」を知らない読者はネット検索することをオススメします。
最後の最後に、最終話は明らかに本シリーズを終了させることを目的に書かれています。ライヘンバッハの滝に主人公を突き落とすのもとってもクールな終わり方なのですが、こういったハッピーエンドも考えたものだと感心しました。

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