国立音大卒業生によるコンサート。
失礼だが、まだ名前もさほど知られていない若手たちである。こういうコンサートの客はほとんどが関係者や家族で一般客はさほど多くないだろう。
ましてオール・バルトーク・プログラムとあっては…。
バルトークほど知名度と人気のギャップが激しい作曲家はいないだろうと思う。
間違いなく20世紀最大級の巨人なのに、人気はない。とっつきにくいし、暗いし、綺麗なメロディーがあるわけではない。わからないわけでもない。
私は好きだけどね。
バルトークとストラヴィンスキーはプログレッシヴ・ロックに大きな影響を与えたと思っている。
そんなコンサートに出かけたのは、二台のピアノと打楽器のためのソナタがプログラムに乗っていたからだ。
妙な編成なので実演に接する機会は少ない。
この曲、好きなんだよね。バルトークの曲でベスト5を選ぶとしたら、間違いなく入れる。
プログレ界の名ドラマー、ビル・ブラフォードはこの曲に影響を受けたことを何かのインタビューで語っていた。
〜バルトーク×バルトーク 室内楽の多面的世界〜
01.ピアノ・ソナタ Sz.80
02.戸外にて
正村恵:ピアノ
03.コントラスツ Sz.111
岸本哲弥:ピアノ
伊藤太郎:ヴァイオリン
粟谷明菜:クラリネット
<休憩>
<トーク企画 バルトークの創作現場:
二台のピアノと打楽器のためのソナタにおける演奏実践の模索>
池原舞:音楽学
04.二台のピアノと打楽器のためのソナタ Sz.110
山本有紗:ピアノ
橋詰香菜:ピアノ
山内創一朗:打楽器
濱崎理絵:打楽器
ピアノ・ソナタはとってもいい曲。
バルトークらしい激しさと精緻なリズム処理が見事な曲である。まあ、バルトークらしいということはとっつきにくいということでもあるのだが…。
『戸外にて』は5曲から成る小品集で、ソナタと同時期の作品だが、各曲に標題があるぶん聴きやすいかもしれない。
演奏は多少怪しいところもあったが、うまくまとめていたと思う。ただ強い打鍵の低音がどうしてもザラついてしまうのが残念だ。もっとも、低音を綺麗に出せるピアニストは少ないのだが…。
コントラスツは変則的な編成のトリオ。
これもバルトークらしい傑作。リズム処理が抜群におもしろい。
ヴァイオリンとクラリネットの音色のコントラストが強烈だ。
第3楽章ではヴァイオリンはスコルダトゥーラ(特殊調弦)のヴァイオリンに持ち替える。クラリネットもA管からB♭管に持ち替えるはずだが、持ち替えていなかった。
休憩を挟んで、まずはトーク。
トークなんていらねえよ、なんて思っていたのだが、謝ります。とてもおもしろく勉強になったです。
自筆譜を映しながら作曲の経緯に触れ、とても興味深かった。語り口も淀みなく滑らかで聴きやすかった。
メインのへんちくりんなソナタ。
これはやはり実演を観るべきだ、と思った。パーカッションは視覚的にも楽しいのだ。
この曲は本当に20世紀の真の名曲である。
バルトーク自身の最高傑作としては私見では、弦楽器・打楽器とチェレスタのための音楽、だろうが、とっつきやすさという点ではこのソナタの方が親しみやすいと思う。
夢中になって見入って聴き入ってしまったので、いい演奏だったということなのだと思う。ピアノが少し大人しかったかな、という気がしないでもないが。
とにかく実演を聴くことができたというだけで十分だ。
ティンパニはとても良かったと思う。ヘッドは皮だったのかな。しょっちゅうチューニングを気にしていた。
細かいことを言えばいろいろあるのだろうが、楽しく行った甲斐のあるコンサートだった。
バルトークに焦点を合わせ、なかなか聴けない曲をプログラミングしたことは賞賛に値する。
客の入りは4割程度だったろうか。動員としては成功とは言えなかったろうが、こうした内容のあるコンサートが地道に行われているというのはとても良いことだと思う。
たまたま地元の小金井のホールでチラシを見つけて興味を持ったのだが、SNS等を使って情報発信をすれば動員も増やせるのではないかという気もする。
なんにせよ、お散歩気分で楽しい日曜の午後だった。
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