私は特にメタル・サウンドが好きというわけではない。
当然メタルばかり聴くというようなことはなく、ロックのサブジャンルとしてメタルを捉えている。なのでメタルもプログレもハードロックもパンクやニューウェイヴですらロックという点では同じだと思っている。
とはいえ、意外にメタル・サウンドは好きなのかもしれない。
ということをBABYMETAL(略してベビメタ)で気付かされた。
だからといってメタルを集中的に聴こうなどということにはならないが、メタル・サウンドとアイドルとのハイブリッドを作り出したベビメタ周辺が気になるのは当然のことだろう。
しかし、意外にそうした音楽は少ない。
まあ、それゆえにベビメタはパイオニアになったわけなのだが…。
ベビメタの活躍は女子メタルにとって追い風になるはずだと思う。
ところがその風に乗りきれていないようなのだ。
シーンをリードしてきたAldiousはドラマーが脱退した。新しいドラマーを迎えて再出発を計ろうとしたDESTROSEはとうとうリーダーのギタリストが健康上の理由で脱退し、さらにヴォーカリストが喉を傷め休養に入ってしまった。Cyntiaはメンバー異動こそないが、路線変更によりメタルとは言えなくなってしまった(必ずしも悪いことではないが)。順調に見えるのは昨年メジャーデビューを果たしたMary's Bloodくらいだろうか。
それぞれ事情はあるにしても、女子メタル界としてこの風に乗りきれないのはなんだかもったいない気がしてしまう。
それはそれとして、アイドル+メタル(あるいはへヴィ・サウンド)というアプローチでベビメタのクローンのようなものがたくさん出てくるかと思ったがそうでもないようだ。水面下ではいろいろな動きがあるのかもしれないが、少なくともそう目立ったことは起きていない。
ベビメタの視線は海外に向いているのだから、国内を狙ってという動きがありそうなものだが、やはり二番煎じとならないようなものを作り出すのは難しいということか。どんなに優れたユニットを作ったとしてもコロンブスの卵と捉えられてしまうのは仕方のないことかもしれない。
実際のところメタル要素を取り入れたユニットはいくつかあるのだが、いずれもアイドル寄りで、ロック好きメタル好きの心を掴むまでには至らないのではないかと思う。
で、いろいろネットを漁っていて見つけた。
いや、別に見つけなくてもいいのだが、アイドル+メタルというのはトレンドになりうるのだから、これといったものが出てこないというのはおかしいし、もったいないと感じていたのだ。
FruitPochette、フルーツポシェット。フルポシェと略されるらしい。
つい先日最初のフルアルバムをリリースしたばかり。これまでにミニアルバム1枚とシングル2枚をリリースしている。
20歳の女性ヴォーカル二人のユニットで、フルーツポシェットといういかにもアイドルっぽいファンシーな名前からはイメージできないゴリゴリのメタル・サウンドだった。『The Crest Of Evil』という邪悪なタイトルを裏切らないものである。
CDで聴く限りよく歌えている。ハモリもあるし、声質が似ているのでユニゾンも綺麗だ。
バックのサウンドは取って付けたようなものではなく、かなり気合の入ったメタルである。若いおねえちゃんたちが歌っていることなどおかまいなしといったような轟音を繰り出してくる。ピアノやキーボードが目立つ曲もあり、女性ヴォーカルということもあってか、ゴシック的な趣が感じられる曲もある。
全13曲のうち真ん中の7曲目がアコースティック・ギターとヴォーカルのみの小品で、そこをブリッジにして爆音の連続で畳み掛ける。意外にキャッチーなメロディーが多く親しみやすい。
そのフルポシェの東志栞(あずま・しおり)・寺谷美奈(てらたに・みな)はもともと「ひめキュンフルーツ缶」(略してひめキュン)というグループの研修生だった。
ひめキュンというのは愛媛のローカル・アイドルなのだそうだ。ちなみにひめキュンはバックアップ体制がしっかり整っていて、ローカル・アイドルとしてはかなり恵まれた状況にあるらしい(負けるなNegicco!)。そのひめキュン研修生4人で結成されたのがフルポシェで正式デビュー前に2人減って現在の二人組となった。
ベビメタが母体の「さくら学院」の重音部という形で発足したのと同様、フルポシェもひめキュンの内部ユニットとして作られたようだ。
正式デビューは2012年12月ということなので、すでにベビメタは存在していたが、彼女たちやスタッフがベビメタを意識していたかどうかはわからない。
ベビメタはその存在自体がすでに奇跡なので、比べてしまってはいけないように思う。
そこにベビメタの亜流ではない何かがあればいいのではないだろうか。そういう点では彼女たちはガチで音楽のみで勝負しようとしている。アルバムのジャケットやその中身にも一切彼女たちの写真が使われていない。アイドル的売り方を敢えてしない戦略なのだろう。「え? どんな子たちなんだ?」と興味を持ってもらえればしめたものだ。まあ、写真くらい載せてもいいのではないかと思うが、そこがこだわりなのかもしれないし、その姿勢は潔い。
ベビメタを聴いたときの「なんじゃこりゃあ!」感は少ないが、十分インパクトの強い音楽になっている。おそらくメタラーにとってはベビメタよりも抵抗感は少ないのではないか。
ただベビメタにあった強烈な違和感が結果として人の心を掴むきっかけになったことを考えると、フルポシェはオーソドックスすぎるかもしれない。だとすれば有無を言わせる余地のないほどにパフォーマンスを磨いていかなければならないだろう。
音楽的にはすでに統一された世界観を持っているようだ。歌詞世界はダークで、恋愛っぽい内容は出てこない。その代わり、曲のバリエーションには欠ける。けれどもそれは強みにもなりうる。これまでの曲名全てが漢字と英語から成っていて、そういう統一感もなかなか良い。たとえば『蒼天-Paradox-』『闇-Happiness-』『静寂-Lacus-』で、必ずしも漢字と英語の意味は一致しない。
ベビメタは世界を相手に闘っているとは言っても、まだ17歳と15歳の少女たちである。そうと知ってはいても信じられないことではあるが…。
ということはまだカワイイ路線でも十分にやっていけるということである。だとすればベビメタと同じ路線で勝負しようとしては分が悪い。
フルポシェの現在20歳(になったばかり)というのはちょうどいいところではないかという気がする。カッコいい路線で攻められる。アイドルかもしれないが、カワイイ路線は捨ててもいい。というか、楽曲的にはすでに捨てている。
ジャケットが素敵だ。
本人たちは一切出ていない。いや骸骨の二人が本人たちか?
本気度が窺える。
すでに47都道府県を回るツアーも経験済みというから、かなり鍛えられてそうだ。
ベビメタに続くのは彼女たちかもしれない、なんてことも思う。彼女たちはベビメタのパクリというふうには思われないのではないか。
ただ、ベビメタと同じように「自分たちで演奏してないじゃん」などという頓珍漢な言いがかりを付けられてしまうのかもしれないが。
楽器を演奏せずに歌うだけではメタルとして認めないというのであれば、メタル・ゴッドのロブ・ハルフォードも否定するのだということに気付いてもらいたい。
ちなみに、フルポシェのCDはアイドルのコーナーにある。ベビメタのようにメタルのコーナーにも置いてあげてほしい。
では、MVをどうぞ。デビュー間もない頃なので歌唱はまだまだだけど。
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