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2015年02月07日22:22

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脚ジャケ

strutとは気取って歩くというような意味である。
それゆえこのジャケットなのだろう。脚ジャケとして有名だが、このセンスは本当に素晴らしい。
ハイヒールを履いた女性の脚、長めのタイトスカートもかえって趣がある。ミニスカートで太腿あらわ、ではスタイリッシュにならなかっただろう。

ジャズ・ピアニスト、ソニー・クラークのアルバム『クール・ストラッティン』(1958年)。
大名盤と言っても差し支えないだろう。
ソニー・クラークという人は日本での人気が高いそうだ。本国では評価されていないとも聞くが、そんなことはあるまい。実力と人気がなければリーダー・アルバムを何枚も作ることなどできないし、サイドメンとして呼ばれることもない。ただ、日本での人気が高いのは事実だろう。バックビートをより強調した彼のプレイが日本人の好みに合うのかもしれない。後ろ髪を引かれるようなロマンティシズムとも言えるだろうか。

おそらくジャズを聴き始めてすぐに出会うことが多いだろう。
そしてジャズをわかった気になってからも折に触れて聴きたくなる。
今さらだけど『クール・ストラッティン』はやっぱりいいよね、といくらかの気恥ずかしさを伴いながら。

つまり名盤なのである。

アート・ファーマー:トランペット
ジャッキー・マクリーン:アルト・サックス
ソニー・クラーク:ピアノ
ポール・チェンバース:ベース
フィリー・ジョー・ジョーンズ:ドラムス

ジャッキー・マクリーンが名前を連ねている時点で名盤になることが約束されたようなものだ。
この人は名盤請負人である。不思議な人で、自身名義のアルバムには決定的な名盤というのがない(普通の名盤や問題作はたくさんある)のだが、客演したアルバムはことごとく名盤と呼ばれるようになる。
どうでもいいことだが、ジャッキー・マクリーンという名前もカッコいい。

かつてのA面2曲はソニー・クラークのオリジナル曲。
ゆったりとしたブルースの『クール・ストラッティン』はもちろんいい。
ジャズ・ミュージシャンはたいていブルースの名手である。

しかしアルバム中の白眉は2曲目の『ブルー・マイナー』だと思う。タイトル通りマイナー・キーの曲でテーマの構成はAABA形式。このテーマからして魅力的で、やはり良いアドリブを引き出すには良いメロディーが必要なのだと改めて感じる。コードだけではダメなのだ。
ソロはマクリーンから始まるのだが、これが絶品。いわゆる泣きのマクリーン節全開なのだ。無駄な音が一切ない、まるでスコアに書かれたような即興である。クラシックではNGなハスキーな音色もジャズの世界では強烈な個性になる。マクリーンのベスト・プレイのひとつであろう。
続くアート・ファーマーのソロもリリカルで素晴らしい。歌心たっぷりだ。彼はメンバーの中ではちょっと世代が上で、普段はオトナなプレイが特徴なのだが、ここでは若い連中に触発されたのかホットな演奏を聴かせる。
そしてリーダーの長いソロ。この人は本来「指がよく動く」ピアニストなのだが、ここではシングルトーン主体で慈しむように美しいフレーズを繰り出していく。むしろ訥々と音を紡いでいく印象なのだが、それゆえに味わい深い。このあたりが日本人の琴線に触れるのかもしれない。
ポール・チェンバースがソロを引き継ぎ、最後にテーマが戻って終わる。
フィリー・ジョーの煽り立てるような(ケンカ腰の)ドラミングも冴えている。
わかいやすい典型的なハード・バップ。短い10分間。

かつてのB面、『シッピン・アット・ベルズ』はマイルス・デイヴィスの曲。スピード感のある演奏。
『ディープ・ナイト』はスタンダード。テーマはピアノ・トリオで演奏され、管はソロ部分にのみ登場という珍しい構成を取っている。この曲調はソニー・クラークにピッタリである。

やはり名盤である。

しかし、文句をつけるジャズ・スノッブもいる。
合う合わない、好き嫌い、なら別にいい。
曰く「ソニー・クラークはバド・パウエルには及ばない」
曰く「マクリーンはチャーリー・パーカーほどではない」
馬鹿か、と思う。
比べる意味がどこにあるのか。モダン・ジャズの大巨人を至高と思うなら、それだけ聴いてろ、と言いたい。
自由なジャズでは演奏家の優劣をつけるのは難しい。個性として聴けないのならとてもつまらないことだと思う。
最近はそういう狭量な意見を目にすることが多い。たとえばBABYMETAL関係でネットをうろうろしていると、原理主義者を気取っているかのようなメタル・マニアやアイドル・マニアがいることに気付く。自分の感性が硬直していることを恥ずかしげもなく晒す大馬鹿者であることは本人は気付いていない。

おっと、過激な物言いをしてしまったが、ソニー・クラークは間違いなくモダン・ジャズのスタイリストだった。ハード・バップとファンキー・ジャズをつなぐような存在だったようにも思う。
もっと活躍しなければならない人だった。それだけの才能と実力を持っていた。日本に来たら大歓迎されたことだろう。
しかし、彼はヘロインの過剰摂取で命を落としてしまう。31歳という若さだった。

『クール・ストラッティン』、ソニー・クラーク畢生の名作。
しかし、これが奇跡の名盤でないことは、管の二人が外れたトリオの作品を聴けばよくわかる。
『ソニー・クラーク・トリオ』(1957年)、これも名盤。このジャケットも素敵だ。
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