今年後半戦の最初は南紫音のヴァイオリン。
期待の若手である。桐朋音大を卒業後、現在はドイツに留学中。
そして3枚目のアルバム『Fantaisie』が先週リリースされたばかり。
今回のリサイタルはその収録曲をほぼ再現。
南紫音:ヴァイオリン
江口玲:ピアノ
01.フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調 作品13
02.イザイ:悲劇的な詩 作品12
<休憩>
03.ヨアヒム:ロマンス 変ロ長調
04.フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
<アンコール>
05.イザイ:子どもの夢 作品14
06.フォーレ:夢のあとに 作品7-1
目に眩しい鮮やかな紫のドレスで登場。
彼女の繊細で清潔感のある音色はとても魅力的だ。
その中に一本太い芯が通ったような印象だ。
フォーレ若いころの名作を彼女は伸びやかに奏でる。
開放感のある演奏だ。
イザイの『悲劇的な詩』は彼女のCDにより知った曲。
タイトル通り沈痛ではあるが、彼女の清潔感の音色が不要な重みを消すことに成功している。
ヨアヒムの小品は連綿と美メロを綴る。
このもの悲しげなメロディーを上手く歌わせる。歌心も豊かである。
そしてフランクのソナタ。
フランクにしては非常に優美な曲で、それだけに人気が高いが、確かに堅牢な構築性と楽想の豊かさが見事に融合した逸品と言えるだろう。
この曲を彼女のライヴで聴くのはこれで三度目である。聴くたびに良くなっている。
終楽章の希望に満ちた明るさは一種のカタルシス。
しかし彼女の演奏でのいちばんの聴きどころは第二楽章だ。抑えてきた情熱が迸る瞬間、寒色系の音色の彼女のヴァイオリンが熱を帯びる。この空気感が味わえるのはリサイタルならではであろう。
アンコールは予想通り。
これでアルバム曲を全曲演奏ということになった。
『夢のあとに』もメロディーの歌わせ方が上手い。
彼女は立ち姿も美しい。
特にヴァイオリニストは立ち姿が美しくないとダメ。
演奏しているときの表情も。
どんなに演奏が素晴らしくても、それらが欠けると肩入れできないのだ。
音楽以外のことにこだわってしまい恐縮だが、ダメなものはダメなので仕方がない。
ピアノの江口玲氏もいつもながらいい仕事をしている。
今日は1887年製ローズウッドのスタインウェイを持ち込んでの演奏。
さすがにいい音だ。
先日、すでに音色や表現といった域を超越したイザベル・ファウストのヴァイオリンを聴いた。
紫音ちゃんがそこに至るにはまだまだ時間がかかるだろうが、楽しみなのは間違いない。
期待できる若手を見守り続ける、音楽を聴くということにはそんな楽しみもある。
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