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2013年10月21日22:09

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トロントでのライヴ映像

探していたDVDを先週ようやくゲット。
廃盤になってずいぶん時間が経っていたようだ。先月初旬にタワレコの通販で注文したものの一向に入荷せず、諦めていたところ、渋谷店に在庫があるとの情報を得て、オンラインをキャンセルし店舗取り置きの手配をした。地方ではいくつか在庫がある店舗もあったのだが、どういう経緯でいきなり渋谷店に在庫ができたのかはわからない。なにはともあれ、苦労なく入手できたので有難い。

ザ・フーの1982年のトロントでのライヴ映像である。

解散直前のコンサートということになる。

不世出のドラマー、キース・ムーンを亡くし、元フェイセズのケニー・ジョーンズを正式メンバーとして迎え、ザ・フーはこのままいくのだろうなと思っていた。
79年暮れのカンボジア難民救済コンサートで新生ザ・フーの圧倒的なパフォーマンスを聴かせ、質感はポップになったとはいえ優れたアルバムも2枚作った。
キース・ムーンは大好きなドラマーだし、彼の死はとてつもなくショックではあったが、ケニー・ジョーンズを迎えたザ・フーも悪くないと思った。なので、解散のニュースは衝撃的だった。もっとも、本国での圧倒的な人気に比べ著しく知名度の低かった日本ではそのニュースの扱いも小さかったのだが…。
キースが亡くなったとき、日本でも一般紙に記事が載った。しかしそれは本国での扱いが大きかったことに驚いて日本でもニュースにしてみた、という明らかに戸惑いの感じられるような内容だったと記憶している。

あの当時のバンドにしてはザ・フーの映像はわりと多く残っている。
ライヴでこそ本領を発揮するバンドゆえ、これは嬉しいことである。

ロジャー・ダルトリー:ヴォーカル、ハーモニカ、ギター
ピート・タウンゼンド:ギター、ヴォーカル
ジョン・エントウィッスル:ベース、ヴォーカル
ケニー・ジョーンズ:ドラムス

新旧の代表曲満載である。『Behind Blue Eyes』が収録されていないのが残念だが…。
『My Generation』『I Can't Explain』で始まり、淀みなく進んでいく。『Pinball Wizard』から『See Me, Feel Me』の流れは圧巻だし、『Who Are You』のモダンでパンクな印象も強烈だ。さらにいつもライヴのクライマックスになっていた『Won't Get Fooled Again』も壮絶なパフォーマンス。
これが解散を決めたバンドのライヴなのかと思ってしまうほど。
いや、だからこそやるべきことを見出せなくなってしまったのか…。

ピートもロジャーも絶好調だし、ジョンのベースも唸る唸る。
ことにピートのジャンプ・アクションがこれほど観られる映像も珍しい。本当に跳ぶ跳ぶ。
ロジャーがマイクをピートのギター・コードに絡めてしまい、なかなか取れずに苦労している様子が微笑ましい。思わず笑ってしまった。
ワイト島やテキサスでのライヴではジョンがあまり映っていなかったのだが、ここでは彼の神のような指さばきをたっぷり見ることができる。
そしてケニーのドラミング。
彼は本当に上手いドラマーだ。キースとは全くタイプが異なる。正確無比のリズムをキープしつつ、凄まじく手数が多い。スネアの乾いた音色もいい。

確かにキースは唯一無二の個性を誇るドラマーだった。全編フィルイン、あるいはリード・ドラムと言われた彼のスタイルは誰にも真似できないものだった。いや、できたとしてもそういうスタイルを許容できるバンドなどザ・フー以外にはなかったろう。
キースはロック・ドラムに革新をもたらした。しかし、やはり異端でもあったのだ。暴論ということを承知で言うと、キース・ムーンはすごいドラマーではあるが、手本にはならないドラマーなのだ。リズム・キープというドラマーとしての必要不可欠の役割から言うと、むしろ手本にしてはいけないとも言える。キースのドラミングではタイム感が怪しくなることが少なくない。そこをガッチリとフォローするのがピートでありジョンなのだ。
それでもキースがワクワクするようなドラムを聴かせてくれたのは間違いない。素晴らしい技巧を持っていたことも疑いようがない。

ケニーのタイトなドラミングを得て、ザ・フーのサウンドはより引き締まったものになった。
ガッチリまとまったという印象だ。隙もない。危うさもない。
バンドの性格はドラマーで決まる、と言われることもあるが、確かにそうかもしれない。
素晴らしいパフォーマンスだと思う。
しかし、彼らはそこに限界を感じてしまったかもしれない、そんなことも思う。
奔放でありながら緻密、しかしどこに行くかわからない未完成なザ・フー・サウンドは精密機械のようなドラマーを得ることで完成形を見た。
そしてピートはその先にザ・フーの未来の姿を描くことができなかったのではないか。

後にロジャーは「キースに似たドラマーを迎えるべきだった」という旨の発言をしている。
そうかもしれないと思わなくもないが、おそらくキースと比べられておしまい、だったろう。後年ザック・スターキーが受け入れられたのは、それだけの時間が経っていたからというのもある。
今回ライヴ映像を観て、ケニー・ジョーンズを迎えたことは間違いではなかったと確信した。キース時代とは異なるが、彼らのパフォーマンスは素晴らしい。こういうザ・フーも悪くない。

幸いなことにこのメンツでのライヴはもうひとつドイツでのものが映像化されている。
メインはキース時代も含めたライヴ・アンソロジーで、そのおまけとしてフルライヴ収録のディスクが追加されている。目的はむしろこのおまけの方。
これも近々入手したいと思っている。
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