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2013年10月08日22:55

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太田真紀(ソプラノ)@オペラシティ・リサイタルホール

昨日ゆっくりしていたので、今日はスッキリとまではいかないまでも、どうやら復活したようだ。
最近は体調を崩すことが多くなった。これもトシのせいかなとも思う。

さて、今夜は久々のオペラシティの名物企画B→C。
7月と8月はB→Cはお休みということもあって、6月以来ということになる。(9月は欠席、ヤロウだから?)

現代音楽を得意とするソプラノ太田真紀。
満を持しての出演ということになるのだろう。
一度聴いてみたかったソプラノである。

太田真紀:ソプラノ
新垣隆:ピアノ *
大石将紀:アルト・サクソフォン +
有馬純寿:エレクトロニクス #

01.シェーンベルク:あの人の姿が今もなお目に浮かび(思い出)*
02.シェーンベルク:渚にて *
03.バッハ:カンタータ『私の心は血の海を泳ぐ』BWV199から *
  ・私の心は血の海を泳ぐ
  ・沈黙のため息、静かな嘆きよ
  ・しかし神は私を憐れんで下さる
  ・深くうなだれ悔いに満ちて
04.シェーンベルク:2つの歌 作品14 *
05.ダッラピッコラ:アントニオ・マチャドによる4つの歌(1948)*
06.酒井健治:私は他人である�掘�2013、太田真紀委嘱作品、世界初演)*
<休憩>
07.細川俊夫:声とアルト・サクソフォンのための3つの愛のうた(2005)+
08.シェルシ:山羊座の歌(1962〜72)から抜粋 #
<アンコール>
09.スコットランド民謡(細川俊夫編曲):私の愛する人は黒髪(世界初演)*

バッハから古典派ロマン派をブッ飛ばしてシェーンベルクを経て現代作曲家というとんがったプログラム。
シェーンベルクの歌曲なんてめったに聴けないし、それ以上にダッラピッコラの作品を聴ける機会などほとんどない。

『あの人の姿が今もなお目に浮かび』はシェーンベルクの死後に発見されたもので、どうやらシェーンベルクの作品ではないらしい。後期ロマン派的な雰囲気が濃厚。
『渚にて』は無調に入りかけのころの作品。リルケの詩と相俟って耽美の世界を繰り広げる。
バッハを挟んでの『2つの歌』も同時期の作品。
ドイツ・リート(歌曲)の最終着地点ということもできるだろうか。
彼女の歌は清廉な声ながらも表現力に富む。

バッハの199番のカンタータは有名な部類に入るものだろう。珍しくソプラノ独唱のためのカンタータ。今日はそこから前半の4曲。
バッハも上手く歌う。思いのほかオーソドックスな歌唱。軽やかな声なのにボディがしっかりしている。
耽美なシェーンベルク作品に挟まれた祈りの世界。意外に違和感を覚えない。
ピアノがちょっともたついた印象だったのが惜しい。

ダッラピッコラの代表作のオペラ『囚われ人』のLPを持っていたが、それ以外の作品を聴いたことがない。
このイタリアの現代作曲家については日本ではほとんど知られていないのではないか。
こういう曲が聴けるのもB→Cの楽しみのひとつ。
『囚われ人』の恐ろしげなる印象とは異なる、なんだかチャーミングな作品だ。と思いきや、それは1曲目だけで、後は深く思索的な印象の曲だ。ちょっと小難しい感がしないでもないが、意外に聴きやすい。

B→Cの魅力のひとつに初演に立ち会える機会が多いというのもあるだろう。
酒井健治の作品は世界初演。
ランボーの詩からタイトルが取られ、歌詞にもランボーの詩が使われている。
特殊唱法も使い、新しさを感じさせるが、全体的にはさほど前衛という感じはしない。良く言えば聴きやすいということになるし、それが長所ではあるのだが、もう少し尖った部分があってもいいように思う。これは後半の2曲を聴いたからかもしれない。
彼女の声はとても清潔感があって丁寧な歌唱が印象に残る。

前半だけでも聴き応え十分。
しかし、後半こそが彼女の真価が発揮された歌唱だった。

今私が最も注目している日本の作曲家が細川俊夫。
B→Cで取り上げられる機会も多く、必然的に聴く機会が多くなっている。
アルト・サックスは最も女性の声に近い楽器と言われることもある。それをソプラノに合わせた妙が感じられる。融合するようで、逆に乖離していくような感覚。和泉式部の和歌が歌詞として使われている。
この人の音楽にはどこか和の雰囲気が漂う。歌詞に和歌を使っているから、ということではなくて。
ソプラノ・パートもさることながら、サックスは非常に難しそうだ。抑えに抑えた演奏が要求される。ブリブリ吹きたいだろうにと思う。ガマンの演奏。
それにしてもいい歌だ。涼やかだが線の太い声。強い意志力を感じさせる。
曲が名演を生むのか、名演が曲の魅力を引き出すのか、どちらも正なのだろう。
作曲者細川さんステージに登場。
B→Cに通っているとかなりの頻度で細川さんに会える。

さて、問題のシェルシ。
ジャチント・シェルシ、イタリアの現代作曲家。この人について私が知っていることはほとんどない。作品を聴くのも今日が初めてだ。シェルシの歌を歌える人は日本ではほとんどいないらしい。
『山羊座の歌』はシェルシのライフワークのような曲集だったそうだが、ついに完成しなかったらしい。
20曲のうち今回はそこからの9曲の抜粋。
ほとんど無伴奏で歌われ、最初の曲ではパーカッション、最後の曲ではでっかい(バス?)リコーダーを自ら演奏しながら歌う。
この曲のみPAを使っていて、エレクトロニクスとはリバーブのかけ具合を言うようだ。曲によってはかなり深いリバーブをかけていた。
さまざまな唱法を駆使した深遠なる響き。
音がエコーのように頭の中で鳴り続ける。
好きかどうかなどとは判断できないが、聴いたことのないような音楽に属するような気がする。抗いがたい魅力があり、独特の世界というよりは宇宙と言った方が相応しそうだ。
いいものを聴かせてもらった。いずれ彼女の歌で全曲を聴いてみたいものだと思う。

アンコールはなんとびっくり、『Black Is The Color Of My True Love's Hair』だった。
ピアノのイントロを聴いて「あれ?」と思ったのだが、やはりその曲だった。ジャズのスタンダードとして取り上げられることも多く、ジョニー・グリフィン(テナー・サックス)の名奏でも知られる。
メロディーが美しい。
斬新なアレンジは細川俊夫によるものだった…。しかも世界初演…。これはすごく得した感じ。
サラッとした質感の中にも情感豊かに歌い上げる。ここでも彼女の清涼感のある声が効果的だ。

というわけで、今回も充実のリサイタル。
6月の原麻理子(ヴィオラ)も出色の出来だったが、今回も勝るとも劣らない。
もっと聴かれるべき歌手と思う。
くりっとした大きな瞳が印象的で、笑顔が愛らしい。

振り返ってみれば、B→Cで声楽を聴くのは初めてのことだった。
残念だったのは空席が目立ったこと。
絶対に聴くべきリサイタルだと思っていたんだけどなあ。。。

さて、来月はクラリネット。
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