詠時感、と書いてエイジアと読ませる。
当て字もはなはだしい。漢字化することに何の意味があるのか、と思う。
ま、それはそれとして。。。
エイジア中期のアルバムがBlu-specでリイシューされるというニュースが入ってきた。
メンバーがガラリと変わったこの時期のエイジアには思い入れはないが、今なら良く聴こえるのではないかという気がしないでもない。
もともとエイジアというグループの登場はセンセーショナルだった。
ジョン・ウェットン(b、vo:元キング・クリムゾン)、スティーヴ・ハウ(g:元イエス)、ジェフ・ダウンズ(key:元イエス)、カール・パーマー(ds:元EL&P)というプログレ界のビッグネームの主要メンバーが集まったスーパーグループだったのだ。
私なんぞは80年代の新しいプログレが提示されるのかと期待しまくったものだが、出てきた音はコンパクトにまとめられたポップな楽曲ばかりだった。プログレというよりは、ジャーニーやTOTOやスティクスのようなプログレ・ハードに近いものだったのである。
しかし、これが悪くなかった。そう思った人が多かったのだろう。売れに売れた。
さすがに腕達者ばかりで演奏は上手いし、楽曲の完成度も高い。ベテランならではの余裕さえ感じられた。2曲目『Only Time Will Tell』のイントロのキーボードがカッコよくてね。
ただ、「これがあなたたちが本当にやりたかった音楽なのですか?」と疑問を投げかけたくなったのも事実。
ジョン・ウェットンはベーシストとしてよりも歌手の方に重きを置いていたようで、英国一のベーシストとロバート・フリップに称えられた凄まじいベース・プレイはほとんど聴くことはできない。
ジェフ・ダウンズのキーボード・オーケストレーションには本場プログレの雰囲気が漂っている。
つんのめるように叩きまくっていたEL&Pの頃よりも手数が減ったぶん、カール・パーマーのドラミングに好感が持てるようになった。かつては能天気に叩きまくる印象が強くて、イマイチ好きになれなかった。エイジア時代の彼はなかなかいい(それでも手数は多いのだが)。
問題はスティーヴ・ハウ。それまでよりも技巧を抑えたメロディ重視のギターを聴かせる。ハウらしからぬ、と言ってもいいように思う。本来のハウではないのだろうが、彼も一度はこういう音楽をやりたかったのかもしれない。なんとなく嬉々としてギターを弾く姿が思い浮かんでくる。それでも格調高く仕上げているあたりは一時代を築いたギタリストとしての矜持だろうか。
デビューアルバムはとにかく売れた。
ロジャー・ディーンのいかにもといったジャケットもウケが良かった。
新しいプログレとはいかなかったが、上手く時流に乗った音楽だった。
それゆえに、産業ロックという謗りを受けることにもなるわけだが…。
2nd『アルファ』もグレードは変わらなかったが、セールス的には前作には及ばなかった。
5曲目の『The Heat Goes On』は悲しげなイントロから劇的展開を見せ、ジェフ・ダウンズの見事なハモンド・オルガンのソロが聴ける。コンパクトにまとめたプログレ作品として十分に聴ける。しかし、ギターの目立たないこと…。
そして、冒頭のシングル・カットされた『Don't Cry』、これはポップ路線。ここでスティーヴ・ハウはなんとも彼らしくない泣きのメロディーを弾いている。
私はこのアルバムを聴いて、ハウは長くないな、次のアルバムにきっと彼はいない、と思ったものである。
すでにハウの居場所が少なくなってきていた。そこには嬉々として弾いていた前作でのひらめきが感じられなくなっている。
それでもあえて言うが、『アルファ』はいいアルバムだ。ジャケットもカッコいい。
ジョン・ウェットンのアルコール中毒での脱退/復帰(その間を埋めたのはなんとグレッグ・レイク)というゴタゴタを経て、とうとう、いややはりと言うべきか、スティーヴ・ハウが脱退してしまう。
マンディ・メイヤーという新しいギタリストを迎えた3rd『アストラ』は良くも悪くも現状維持に留まった作品だった。
ハウが抜けて遠慮がなくなったのか、ジェフ・ダウンズのキーボードがより前面に出て、それはそれで聴くべきところは多い。
マンディ・メイヤーはごく普通のハード・ロック系ギターを弾いている。さほど目立たないが悪いギターではない。しかし、彼には気の毒だが、前任者の凄さを印象付けることになってしまった。なんだかんだ言いつつハウのギターはエイジアのキモだったんだな。
セールス的にも振るわず、事実上ここでエイジアは終わった。
その後、ジェフ・ダウンズがジョン・ペイン(b、vo)と組んで立て直しを図る。最初の頃はカール・パーマーも参加していたが、そのうちにダウンズとペイン以外は出入りが激しくなる。
今度リイシューされるのはこの時期の作品である。
実はほとんど聴いたことがない。世間的にもたいして注目されていなかったろうと思う。
ただ、ジョン・ペインが良いシンガーであることは知っている。ジョン・ウェットン同様中音域を生かした歌い上げるタイプのヴォーカルだ。
少なくともダウンズのキーボードを聴くだけでも価値があるのではないかと思う。
その後、エイジアはオリジナル・メンバーで再編している。
つい最近、結成30周年を記念する新しいアルバムがリリースされたばかりだ。
秋には来日公演を行なう。
元気なのはよいことだ。
スティーヴ・ハウなんかもうよいよいのじいさんみたいに見えるが、とっても元気らしい。イエスのメンバーも兼任しているのだから。
ハウさんや、どっちがホントのあんたかね?
まあ、いい。いつまでも元気でギターを弾いてくれてると思うだけで嬉しいではないか。
しかし、ハウのブチ切れ弾きまくりを聴くならこの2曲がいい。イエスの『リレイヤー』と『悟りの境地(Awaken)』。本人は全然ブチ切れてなんかいないのだろうが、彼以外の誰も弾けないような壮絶凄絶超絶なギターが聴ける。
これでドラムがブラフォードだったら、ということは言わんでおこう。
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