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2011年01月12日23:21

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アリス=紗良・オット@オペラシティ

昨晩から喉がヒリヒリする。風邪気味なのだろうか。微熱っぽい感じはあるが、計ってみると平熱である。

気を取り直して、今日はリサイタル。
新進のピアニスト、アリス=紗良・オットを初めて聴く。ドイツ人の父と日本人の母を持つということで、ルックスも日本人に近い。
数年前から話題になってはいたが、ルックス先行と勝手に判断して見送っていた。グラモフォンと専属契約と聞いても、その実力を信じられなかったのだから失礼な話である。
実際にCDを聴いてみたら、いいではないか。特にショパンのワルツ集のリリカルな語り口が気に入った。というわけで、来日を待っていた。最新作のベートーヴェンも聴き応えがある。今回はそのベートーヴェンをメインに据えたプログラムになっている。

01.メンデルスゾーン:厳格な変奏曲
02.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第21番『ワルトシュタイン』
<休憩>
03.ショパン:ワルツ第2番
04.ショパン:ワルツ第3番
05.ショパン:ワルツ第4番
06.ショパン:ワルツ第6番『子犬のワルツ』
07.ショパン:ワルツ第7番
08.ショパン:スケルツォ第2番
<アンコール>
09.ショパン:夜想曲第20番
10.リスト:ラ・カンパネラ
11.ベートーヴェン:エリーゼのために

メンデルスゾーンの曲は「厳格に変奏曲形式を守っている」ということで、いかめしい曲ではない。むしろ彼らしい抒情的で美しい曲だ。メンデルスゾーンのバランス感覚は凄いと思うし、アリスもうまくメリハリをつけた好演。

『ワルトシュタイン』はCDよりも滑らかな演奏だが、ライヴならでは迫力がある。
ハ長調なのに明るくなりきれない曲で、取り立てて美しいメロディーがあるわけでもない。ベートーヴェンらしいガッチリした構造で、演奏難度も高い。つまり、聴かせるのが難しい曲だと思うのだ。余談だが、そもそも曲を御しきれず破綻した演奏を聴いた記憶も新しい。
さすがにプログラムのメインに置いただけのことはある。
高い集中力で一気に弾ききったという印象だ。打鍵は荒くならず、歌心も豊かで、細心の注意を払った演奏とも言える。女流ならではというのが正しい表現かどうかはわからないが、柔らかな表情のベートーヴェンだ。もちろん、それは「ぬるい」というものではない。ゴリ押しではなく、各主題やハーモニーを浮かび上がらせるような神経の行き届いた演奏だということだ。
それだけに聴き手にも緊張を強いるということは確かにあると思う。このあたりは好みを分かつかもしれないが、万人に受けようとする演奏よりはよっぽどいい。

後半のショパンのワルツはリラックスした演奏。
CDよりもアゴーギクが大胆だ。小洒落た雰囲気には欠けるものの、清潔感のある語り口は好感が持てる。3番のイ短調と7番の嬰ハ短調が特に良かった。これは単に私の好みかもしれないが…。

ひそかに楽しみにしていたのがスケルツォ。4曲の中で最も知られている2番をクロージングに持ってきた。ワルツに比べると一癖も二癖もある曲。激しさと優しさが同居していて、ショパンの曲の中では弾きにくい部類のものだろう。もちろん、技術的にという以前に音楽的にという意味である。
アリスはやはり何かも持ったピアニストなんだなと感じる。
意外にあっさりとした感じに仕上げていた。いずれはもっと大胆な解釈をするのだろうが、今はこれでいい。中間部を劇的にかつ切なく、思い入れたっぷりに弾いていたのはさすがだ。

アンコールは大盤振舞いで3曲も…。
ショパンのノクターンは日曜に友理枝ちゃんの演奏(これもアンコールだった)で聴いたばかり。情緒的で暖かみのあるアリスと、凛として冴え冴えとした友理枝ちゃん。奏者の個性は出るものだなと改めて思う。
『ラ・カンパネラ』はショウピースとしてアンコールに相応しい。これは手元を見ていると抜群に楽しい。
『エリーゼのために』はこうしたリサイタルで聴いたのは初めてかもしれない。そういう点では貴重か。きちんと弾かれるといい曲なんだなと思う。

広いホールでピアノのリサイタルということで、どうかと思ったのだが心配するほどではなかった。ただ、やはり音は少し広がりすぎるかもしれない。もう少し小さなホールで聴きたいというのが正直なところ。
足を踏み鳴らしての力演だったが、その音がやけに大きく響いていたぞ、と。

サイン会の列の長かったこと…。
25分くらいかかった。それでもまだ後ろに列は続いていた。
彼女も疲れているだろうに大変だろうと思う。ひとりひとりきちんと顔を見てサインをしていた。笑顔にはまだあどけなさが残っている。

実はアリス=紗良は小さなレディのお気に入りのピアニストだった。毎日のようにショパンのワルツを聴いていたらしい。「ありすさらチャンって綺麗ですよね」と言っていたので、基準はそこかいという気がしないでもないが、憧れのピアニストだったのは確かなようだ。
「ありすさらチャンの演奏はとってもよかったよ」と天に向かって報告しておくか。

しかし、いい音楽を聴けば具合も良くなるかなと思ったのだが、それとこれとは別問題のようだ…。
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