今回はちょっと変わった味わいのものを…。
*****
ノーザン・ライツ Northern Lights Cocktail
3/8 ウォッカ
1/8 ペルノー
1/8 コアントロー
2/8 グレープフルーツ・ジュース
1/8 レモン・ジュース
1tsp ブルー・キュラソー
上記ブルー・キュラソー以外をシェークしてカクテルグラスに注ぐ
ブルー・キュラソーをグラスの底に沈める
*****
ノーザン・ライツ、直訳すれば北方の光。それは白夜の輝きかもしれないし、神秘的なオーロラかもしれない。あるいは、澄んだ空気にキラキラ舞う太陽の光か、満天に散りばめられた星々の瞬きだろうか。
散々考えた結果、この名前を付けることにした。
悩むことになったのは、シベリウスの第6交響曲にニックネームがなかったからだ。
シベリウスの音楽が北欧的かどうかはともかくとして、フィンランドの深い森と澄んだ湖を思わせてくれることは間違いない。自然のアニマそのものを音にしたかのような彼の音楽は、抒情的でメロディアスではあるけれど、決して甘くはない。何故ならそれはいつも死と隣り合わせなのだ。7曲の交響曲も、いくつかの交響詩も、そして悲哀に満ちたヴァイオリン協奏曲もそうである。彼はマーラー以降の最も重要なシンフォニストというだけでなく、マーラーとは違ったアプローチで死と向き合った作曲家だった。
7曲の交響曲の中でいちばん人気が高いのは、やはり第2番だろう。もちろんシベリウス以外の誰も作り得なかった素晴らしい曲ではある。しかしここにはまだロマン派やチャイコフスキーからの影響が見え隠れしている。そういう意味では第4番以降こそまさに孤高と言うに相応しい。そして最もシベリウス的な傑作だと思っているのが第6番。この曲は実のところ、7曲の交響曲のうちで最も知られていないと言ってもいい。しかしこの曲は何か特別なように思える。厳しくも優しい自然と、それに対する畏怖と憧憬。情熱は秘められ、生と死の葛藤も昇華され、そこに展開されているのは清澄で夢幻的な世界である。その純度は極めて高い。
北欧だからアクアヴィットと決めてしまうのもつまらない。しかしハーブ系の風味は捨て難い。厳しい自然の風景を表現するために、この風味が欲しいと思った。そうなるとまず思いつくのがペルノーだというのは順当なところだろう。実際この典型的なヨーロピアンタイプのリキュールはもっといろいろな使われ方をされていいと思う。しかしこれだけでは個性的すぎてしまうのは否めないところ。そこでパートナーにはコアントローを選んでみた。品のあるスッキリしたオレンジの風味は何にでも合う。
さてベースだが、淡い色に仕上げたかったので、ホワイト・スピリッツということになる。北欧で人気があるということもあり、ニュートラルな性格でほかの材料の個性を生かすというメリットを買って、ウォッカを使うことにした。特に銘柄にはこだわらないが、フィンランドにはフィンランディアという名品があるので、それを使うのもいいかもしれない。そして果汁にはグレープフルーツを試してみた。甘みの少ないリキュールを使っているので、穏やかな甘みを補強したかったからだ。しかしこれだけではやや味がぼやけてしまうので、ウォッカを減らし、レモンを加えて味を引き締めることにした。ペルノーのおかげでフルーティーではあるが一本芯の通ったものができたと思う。色は綺麗な黄色に仕上がるはずだ。ついでにこれは是非ハードにシェークしていただきたい。より冷たい方が口当たりがいいように思えるからだ。
最後にブルー・キュラソーをドロップしてみた。これは当初なかったものだが、今回加えてみることにした。ちょっとオーロラっぽい?
しかし、このシベリウスの第6交響曲、どこを取っても感動的な響きに溢れている。しかもこれは傑作と呼ばれることを拒むかのような凛とした雰囲気をまとっている。谷間にひっそりと咲いた可憐な花のように儚げなたたずまい。安らぎにも似た祈りが感じられる。あるいは白夜の下にたたずむ美少女だろうか。その少女が抜けるような白い肌をしているのか、健康的な小麦色の肌をしているのか、演奏のタイプはそんな2種類に分けられるようだ。どちらを取るかは好みの問題。そしてシベリウスのシンフォニーには珍しくハープが使われていて、その響きが彩りを添えていることを付け加えておく。
ログインしてコメントを確認・投稿する