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2010年11月06日23:51

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メッツマッハー&新日本フィル@すみだトリフォニーホール

先週のインゴ・メッツマッハー&新日本フィルの演奏が素晴らしかったものだから、慌ててチケットを手配してしまった。この人は間違いなくマーラーを上手く振るという確信のようなものがあったのだ。

プログラムはマーラーの交響曲第6番『悲劇的』のみ。
これだけで1時間半かかる大曲である。

マーラーの6番は最高である。もちろん、マーラーの曲はどれも最高なのだが、その中でも特に素晴らしいもののひとつだ。
9番が最高傑作であることは間違いないが、その次に来るのは6番だろう。(いや、『大地の歌』だ、という意見もあるかもしれない)

マーラーの曲の中では最も古典的な構造を持った曲。でありながら、内容は異形そのもの。『悲劇的』というニックネームもあることから、幸せにしてくれるような曲ではない。というか、マーラーには幸せにしてくれるような曲はほとんどない。その中でも強烈な曲である。激しさという点では白眉だろう。それでいて、抒情的で美しいメロディーもたくさんある。カウベルの響きがちょっと長閑だったりもする。チェレスタをシンフォニーで使ったのはこれが最初か? なんと言ってもハンマーだろうが、どんな乱暴な聴き方をしてもハンマーを聴き逃すことはあるまい。寝ていても目が覚める。文字通りハンマーである。それもでっかい。
凄絶に突き進む終楽章がいちばんの聴きどころなのだが、この楽章にはハープの特殊奏法が指示されている。爪で弾くのである。通常ハープは指の腹で弦を弾く。よって、ハーピストの爪は短い。つまり自分の爪では弾けない。そのため、琴を弾くときのような爪を付けたり、何かプラスチックのようなもの(たとえばクレジットカードなど)で弾くらしい。
というわけで、5管編成の大オーケストラ、視覚的な見どころも満載なのである。
ギリギリのところで調性音楽に留まり、かつ20世紀音楽への預言的な響きも聴こえる重要作だと思う。(9番ではすでに調性は崩壊している)
ところが、マーラーの作品としてはあまり人気のない方に入ってしまうようだ。とらえどころのない7番とともにマーラー音楽の奥座敷という位置付けだろうか。

さて、注目していた以下のポイント。
・第1楽章の提示部を繰り返すか → 繰り返しあり
・第2楽章第3楽章の順番は → スケルツォ・アンダンテの順
・第4楽章でハンマーを鳴らす回数 → 2回
という結果だった。つまり、オーソドックスである。

マーラーが最後まで迷ったと伝えられている中間楽章の順番だが、やはり今回のように聴き慣れたスケルツォ→アンダンテの順番の方が据わりがいいような気がする。

今回も前回同様、右手でヴィオラと第2ヴァイオリンを煽るような仕種がよく見られた。内声部を重要視しているということだろう。やはり重心の低い演奏で、やや遅めのテンポで、悲愴感がビシバシ伝わってくる。
一種の葬送行進曲とも言える第1楽章から、すでにクライマックスであるかのような慟哭の盛り上がりを見せる。憧れに満ちた第2主題も思い入れたっぷりに歌わせる。展開部の解釈が見事で、20世紀音楽を予兆させる預言的な響きがここまで聴き取れる演奏はそうないのではないかと思う。現代音楽に強い故か? ただ、金管のミスが多かったのが残念。マーラーは金管の弱奏が多いから難しいのだろうと思う。
第2楽章のスケルツォ。第1楽章とテンポも楽想も似ているため、文字通り諧謔的に描いていかないと、コントラストが出ず締りがなくなる。曲全体から見ると重要な楽章になる。ときおりオリエンタルな響かせ方をするなど、メッツマッハーの音の組み立てはここでも斬新。
楽章間のインターバルなしで第3楽章に続く。マーラーならではリリカルな緩徐楽章。楽器を知り尽くしたオーケストレーションの妙味が味わえる。まさに巨大な室内楽と言えるような繊細さだ。木管のアンサンブルが見事。メッツマッハーは穏やかで安らぎに満ちた響きの中に、後の悲劇を予感させるという、理想的な解釈を聴かせる。終楽章に対しての悲劇の予兆として、この並びには説得力がある。
そして終楽章。結局はここをどう振るか、なのだ。音楽的に書法的にもこの曲では終楽章がピークなのである。抽象的な書き方で申し訳ないが、メッツマッハーは音符の向こうに音以上の何かを見ている、とそう思った。まさに渾身の一撃。最初は少々不調だった金管も鳴りがよくなった。やはり金管が充実していないとマーラーは締まらない。ハープの特殊奏法もチラッと見ることができた。

今回の聴衆の拍手のタイミングは完璧だった。メッツマッハーも指揮の動作をやめるまでにたっぷり時間を取ってはいたが、手を下ろすまで全くフライングがなかった。十分に余韻を楽しみたい、そんな気分の表れだったのかもしれない。それだけ素晴らしい演奏だったということだろう。

もちろんアンコールはない。

やはりメッツマッハーのマーラーは素晴らしかった。客演でこれだけのパフォーマンスを見せるのだから、手兵を振ったらどれだけ凄いことになるか…。
いずれはヨーロッパのオケでマーラーを録音してもらいたいなと思う。
生で聴いた中ではバーンスタイン、クーベリック、インバルに匹敵するマーラー演奏だったと思う。

今回の2種のプログラムはいずれも悲劇的な曲ばかり。個人的には好ましいプログラムなのだが、能天気なメッツマッハーも見てみたいと思った。

今回目立ったのはシロフォンとグロッケンシュピールなど八面六臂の活躍を見せた小柄なお姉さん(石橋知佳さん)。ただでさえ目立つパートを完璧にこなしていた。たぶん先週のハルトマンでも大活躍だったと思う。

そこから有楽町に出て、バーデンバーデンでホフブロイハウス・ビールを堪能。
いい一日だった。
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