ホンダの車を車種を限定して借りるには、２つの方法がある。
ひとつはカーシェアリング方式で、出発時間は自由だし、レンタル料ももう一方の半分だから最初はそちらにするつもりでいた。ところが東京近辺には１台しかなく、それも最近全損にされてしまい、新車が入る予定もないという。
もうひとつの方法は、ホンダの正規ディーラーを窓口とするもので、値段は前述のカーシェアリング方式の倍、利用時間もお店の開いている時間（１０時〜１８３０時）に限られる。しかもレンタル時間は１２時間の次は２４時間と使い勝手は悪いが、ディーラーの担当者から車についていろいろ話を聞くことかできる。戸惑うことがあっても、その場ですぐに教えてもらえるのは長所だ。
借りたのは夕方だったので、軽く一寝入りしてから真夜中に家を出る。
車の特性について事前にネットで調べたところ、さまざまな感想に共通する長所は、素直かつピーキーなハンドリング、良く効くブレーキ、タイヤのグリップの良さ。短所は非力なエンジンと車内の居住性（騒音、エアコンの効き）、積載量不足、後方視界の悪さ。
あと燃料タンクの小ささ（２５リッター）を挙げる人もいた。カタログデータではリッター２０から２５、よって机上の航続距離は５００キロ以上となる。だがディーラーの人が遊んだ時には（どこで？（笑））リッター１０だったという。深夜早朝に山の中を走り回るには、やや心もとない数字だ。
慣熟の一環として、車の少ない時間に高速も試してみることにしたが、積んでいるはずのETC車載器が見当たらない。室内灯を点け、ペンライトも咥えて探すこと５分、ダッシュボードの中の隅に鎮座していた。しかもネットの指摘通り、ダッシュボードには車検証と取説以外、ものが入りそうにない。（笑）
内装を簡略化した相棒の車内も静かとは言えないが、Ｓ６６０はシートの真後ろにエンジンがある（ミッドシップの後輪駆動）ので、ウエストゲートが抜ける時のぷしゅぷしゅ音は面白いが、エンジンの駆動音がほぼダイレクトに伝わり、しかもタルガトップ（オープンカー）だから排気音やらロードノイズも加わって、たしかに車内はうるさい。ただしエアコンは、後述の通り良く効いた。
スポーティーな車は総じて足回りが固めだが、Ｓ６６０もその例に漏れず、室内のバックミラー映像がブレるほど固い。（笑） ただし収斂性は良く、車体の規模にしてはストロークもあるので、跳ね過ぎて困るようなことはなかった。ただし直進していても終始落ち着かないのが気になった。ホイールベースが短いからなのか、轍のせいなのか、それとも何かトラブルに起因するものなのかはわからなかった。
車重は相棒のほぼ６割と軽いが、非力と言われるエンジンはワンボックス型の軽と基本同じとのことで、馬力は５分の１、トルクも４分の１しかないから、まったく期待はしていなかった。ところが交差点で先頭になってしまった時、後続車のお荷物になるまいと加速したところ、気づけば他車はバックミラーの中で小さくなっている。デジタル速度計も８０まであとちょっとだったので、あわててアクセルを緩める。以後も馬力不足で悩むことはほぼなく、むしろ使い切り感が気持ちがいい。たしかにもう少し欲しい時もあったが、峠の下りなら十分だ。（笑）
八王子で高速を下り、最初の給油。４５キロで５リッターちょいだから、リッター９キロ。この時はまだ慣熟中だったのでエンジンも回していない。前に借りた奴、どこで給油したんだ。（怒） 結局、総走行距離は４７５キロで、総給油量は３２リッターだったから、リッター約１５キロ、航続距離は３７５キロということになる。エコではないが、燃料は積み過ぎても重くなるだけなので、２５リッターという燃料タンク容量は実用的と言えるだろう。
ＬＥＤのヘッドライトは十分明るい（視線が低い分、後続車や対向車のライトはローでもまぶしい）が、信号は手前にあるとフロントシールドの縁がかぶって見えなかったり、斜め後方も見づらい。後方視界はトラック並に見えないから、バックモニターが重宝した。ハンドルのすぐ左手には小振りのモニターがあるが、カーナビは付いていないので、前に進む時はただの役立たずである。ちなみに初期型のモデルはこのモニターにスマホのカーナビアプリを表示することができるらしいが、オプションにすらカーナビの設定はなかったという（現行の改良型はオプションで付けられる）。
八王子からは青梅を経て秩父へ。出発時は蒸し暑かったので屋根を付けたままエアコンを使ったが、青空の広がる明け方の秩父はとても爽快だった。そこで屋根を外すことにする。
Ｓ６６０の屋根（ルーフ）はソフトトップ、要するに布製で、取り外した後はくるくると巻いて所定の場所にしまう。ネットで検索すると、脱着は簡単とも面倒とも言われ、どっちなんだろうと不審に思っていたが、実際は簡単だった。面倒と言っている人は他車の電動自動開閉ルーフと比較してのことなのだろう。なおメーカー純正ではないが、サテライトメーカーの製作したハードトップも売っている。
詳しくは省くが、はずす時は左右とセンターのロック３カ所を解除するだけ。装着も難しいことはなかった。所定の格納場所とはフロントのボンネットを開けたところにある横長の箱で、屋根を付けている時は荷室としても使えるが、ラジエータの直後にあるため内部は１００度近くになることもあるという。「生モノは絶対に入れないでください。干物になります」
運転席に座り見上げれば、青い空が広がる。屋根に大きな窓の付いたワゴン車に乗っていたこともあるが、その比ではない開放感がある。最初は感動したが、シートベルトを付けずに走っているような無防備感があって、ちょっと落ち着かない。風も予想以上に舞い込むので、早々にヘルメットを被ることにした。ネットで誰かがＳ６６０のことを「蓋のあるバイク」と表現していたが、言い得て妙だ。いや、公道も走れるカートか。（笑）
走り慣れた２９９号を、次第にペースを上げながら西に向かった。
Ｓ６６０（その��）
https://mixi.jp/home.pl#!/diary/3210641/1972681121
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