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2015年03月22日08:58

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随筆「甦る楫取素彦」第187回

 ところで廃娼運動は、理念を掲げた運動であった。そこでは思想と理論をもって世に訴え、運動を導く指導者を必要とした。森川はその人物として石嶋良三郎の名を挙げ次のように語る。「この運動について没すべからざる功績者は実に上毛青年会の石嶋良三郎氏である。彼がこの問題の中心人物としていかに多くの辛酸をなめたことか。群馬の廃娼の功績はこの人に負うところが多大なのである」
 石嶋良三郎については、全国廃娼大会に於いて群馬を代表して出席し大演説を打ったことを別項で紹介した。
 森川は、最後に当時の日本と群馬県に関して総括して見解を述べる。「明治の初年に於ける日本の気運はすこぶる高潔にして新進なるものであった。陋習を脱せんとする気概に満ちていた」、ゆえに、天下の公娼廃止は数年で全国で実行されると思ったがそうはいかなかった。廃娼令を出したが立ち消えになったところも現れた。しかし、「我が上毛は青年によって持続されたために成功を奏した」、「廃娼問題における日本の先登者たる栄誉を得た上毛はその成功の大半を青年の意気に帰さねばならぬ」と明治の群馬の青年をたたえ、次のように叫んだ。「起(た)て上毛人、起(た)って汝の使命を果せ、今日の如く淫靡の醜俗が、我が国を亡ぼそうとするに際し汝の使命のために奮闘することは快心の至りではないか」。私は今日の若者にこの叫びを是非とも伝えたいと思う。
※土日祝日は中村紀雄著「甦る楫取素彦」を連載しています。


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