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2015年03月01日09:52

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随筆「甦る楫取素彦」第181回

この開会の辞は今日の社会にも正に通用するものと思う。今日、物質文明は極度に隆盛となっているが、逆に精神文明は貧しくなっているからだ。更に注目すべきことは、廃娼の実施は人権の尊重の上で本質的に重要なことであり、精神文明の核心につながることだ。そして、この大会が行われたのは明治憲法下のことであるが、今日の日本国憲法では、人権の尊重を最高の価値に据えている。従って現在、群馬の廃娼は一層高く評価されるべきにもかかわらず、忘れ去られている。従って、この開会の辞が突きつけるものを私たちは真摯に受け止めなくてはならない。このような視点からみるとき、以下の諸氏の発言の意味がより新鮮に私たちの胸に響く。
2、廊清会会長の祝辞 (島田三郎)
 次は廊清会会長島田三郎の祝辞の要点である。「これ迄に公娼廃止を実行した県が一、ニあるが持続したところは群馬県のみである。群馬県に於いては有志の士がはやくに公娼制が野蛮の遺制で社会人心を毒すること大であることを見抜き、奮然と立って廃止を提唱し、それが県民の世論となり県会の議決となり、ついに汚濁なるこの制度を打破し、非公娼主義の急先鋒となり、現に全国唯一の廃娼県として実績を挙げ、範を内外に示しつつあるは、眞に群馬県民の誇りであると共に私が最も心に感じる事実であって、私の平生の主張が決して空論でないことを実証して余りあるものである。今や、公娼廃止を断行してより満20年の春秋を経過し、本日一大祝会を開きこの光栄ある歴史を紹介せんとする。ここに満腔の熱誠をもってこれを祝しあわせて群馬県諸士が唯これをもって全てをやり終えたと満足することなく更に進めてこの主義主張を全国に貫徹せしめ、恥ずべく忌(い)むべきこの悪制度を掃とうし、東洋君子国の名実を全うすることを嘱望して止まない」
※土日祝日は中村紀雄著「甦る楫取素彦」を連載しています。


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