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2023年12月26日21:27

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12/24 大巻伸嗣 真空のゆらぎ@国立新美術館

これも早くにチラシをもらっていて、見たいなと思っていたのについつい後回しになってしまった展覧会。気づけばクリスマスで会期終了。
イヴに六本木のようなオサレな場所に出かけるのは躊躇われた。人でいっぱいかも。が、それは杞憂だった。午前中から六本木に出かける若者は少ない、みなさん、ライトアップされる夕方からなのねー。年寄りは早い時間に動き、日没とともにさっさと帰宅(笑)

なんと無料。会期末の日曜日だから混んでいる方だったと思うが、大きなインスタレーションを味わうには差し支えなし。

舞台美術にも現代アートにも疎い私、アーティストの名前を知らなかった。そしてもし知らないまま見たなら、きっと海外の人だと思っただろう。なぜそう思ったかうまく言えないが、オラファー・エリアソンのような、宇宙的な、あるいは反対に原子的な規模を感じたからかもしれない。広い空間の中で光と影、光と闇が交互にやってきて、見る者の身体に働きかけてくるのだ。

写真撮影は可、ただし動画は不可。光と影、光と闇のゆらぎ、そしてそれに呼応する音もまた重要な要素と思われるので、ここで写真だけで伝えるのは難しいと思うが紹介したい。(HPに動画があります)

https://www.nact.jp/exhibition_special/2023/ohmaki/index.html
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大巻伸嗣(1971年岐阜県生、神奈川県在住)は、「存在するとはいかなることか」という問いを掲げ、身体の感覚を揺さぶるような大規模なインスタレーションを創り出してきた現代美術家です。大巻は、そうしたスケールの大きな創作を、日本はもとより、アジアやヨーロッパなど世界各国で発表し、高い評価を得てきました。また、地域を活性化するアート・プロジェクトから舞台芸術まで、多くの人々と協働して空間を変容させるさまざまな現場でも比類のない資質を発揮しています。
大巻の空間に包み込まれた私たちは、この世界における我が身の存在に、新たな視点を投げかけることになります。空間に痕跡を残すことで自らの身体を実感し、また、闇に包まれたり、強烈な光に照らされたりすることで、身体だけでなく、意識や感覚に、内省的に向き合うことを促されるのです。
大巻は、現代社会がどのような歴史を経て今に至り、現在どのような問題を抱えているかを深く考察し、それをもとにインスタレーションの着想を得てきました。また、光と闇を重要な要素とする大巻の空間は、太陽のリズムとともに在るこの世界を象徴するかのような始原的な感覚を湛えています。この始原性とも関わるのが、大巻が好んで用いてきた繊細かつ濃厚な装飾的な造形です。人間は、自然を抽象化した文様を身近なものとすることで、自然に寄り添って生きてきたからです。大巻のインスタレーションは、現代社会に対する優れた批評である一方、人間に普遍的にそなわる根源的な造形志向を色濃く反映しているのです。
本展覧会は、国立新美術館で最大の、天井高8m、2000m²にも及ぶ展示室をダイナミックに使って開催されます。この広大な空間でなければ展示できないインスタレーションは、観客の身体的な感覚と強く響き合い、細分化した世界に生きる私たちが失った総合的な生の感覚を喚起することでしょう。展示には、映像や音響、そして詩も用いられるほか、会場内でのパフォーマンスも予定されています。大巻が創り出す、現代の総合芸術をお楽しみいただければ幸いです。



《Gravity and Grace》2023
「本展覧会は、2016年に初めて発表された〈Gravity and Grace〉シリーズの最新バージョンから始まります。さまざまな動植物からなる文様を施された大きな壺から放たれる強烈な光と、それが生み出す影。ここで大巻は、原子力が引き起こした未曽有の人災に、核分裂反応の爆発的なエネルギーの象徴とも言える、最大84万ルーメンにも達する強烈な光で応答しています。大巻は、この魅惑的な光と、そこに文字通り吸い寄せられる人々の姿を通じて、エネルギーに過度に依存した今日の社会を批評しています。 作品のタイトルは、フランスの哲学者シモーヌ・ヴェイユの箴言集『重力と恩寵』に由来します。ヴェイユによれば、重力によって縛られた私たちは、真空を受け容れることにより、神から恩寵を得られるといいます。大巻は、この大きな光と影のインスタレーションをもとにしたフォトグラムの制作も予定しています。」

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巨大な壺の中、ゆっくりと上下する発光体。発光体は12面体?のミラーに強い光の照明器具が取り付けられていて回転している。発光体がゆっくりと動くと壺の表面を覆う文様の影が、壺そのものに、さらには展示室の壁や天井や床に、さまざまな表情を映し出す。
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壺の紋様は、人や動物や鳥や、花や葉や〜つまり地球上の生命〜が切り絵のように隙間なく繋がって描かれ、透けて向こうが見えるので、影となり光となって動き出すよう。
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それは美しく、生命讃歌のように見えなくはないが、発光体が放つ光が白く強烈すぎるため、微かな恐怖をも感じてしまう。「原子力が引き起こした人災という悲劇を下敷きに、エネルギーに過度に依存した今日の社会を批評している」という解説に、ああそうかと頷く。
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この大きな建造物が壺の形をしているのにも何か意味があるのだろうか。壺からはなんでも叶う魔法が出てきそうだ。でも、それが一旦溢れでるともう元には戻せない。人類はそこで気づき、後悔をする…物語のセオリーだ。
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《Gravity and Grace moment 2023》
次に展示されたのが《Gravity and Grace》の関連作品。フォトグラムという写真技法で、印画紙の上に直接ものを置いて焼きつける。光の当たった部分が黒く、ものが存在した部分は白くと、光と影が逆転した写真ができあがる。
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ふと、杉本博司が使用期限過ぎた印画紙に直接現像液で文字を書いていたことを思い出した(こちら)が、実はそれよりも先に広島平和記念資料館で見た「人影の石」を思い起こしてしまった。壺の中の強い光が「核分裂反応の爆発的なエネルギーの象徴」であるならば、地球に集う花や鳥に混じって人も影となって焼きつけられる。考えすぎだろうか。
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《Liminal Air Time  ̶ Space  真空のゆらぎ》(2023)
「見えていないけれど存在するものがある。あるいは逆に、見えているものは実際にはそれと違うのではないか」という作家の考えが発端となった本作。
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極薄いポリエステスの布が送風機に煽られ絶え間なく形を変える。わずかな光もまたゆっくりと変化し、布を照らし、布はまるで波のようでも、海中の生命体のようでもあり、いくら見ていても飽きない。
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暗黒舞踏家の友人がいて、もう10年以上も前に彼女の公演『竹内実花舞踏「夢二夜」』を見に札幌に行ったことがあるのだが、ふと、それを思い出した。
空間の広がりと運動、光と影の交差、実体化した気配、揺蕩い、ゆらぎ…なにか共通するものがある。

これを見るだけでも、慌ただしい年末の1日に六本木まで来た甲斐があった。

このほか、パンデミックの中毎日1枚窓からの眺めを即興的に描いた水彩画や、暗闇の中で身体と感覚だけで描いた黒のドローイングも印象的だった。
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アルバムあります。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121023217&owner_id=2083345

12月25日終了

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