10/8 MOTコレクション展＠東京都現代美術館

「お化け縁日（こちら）」の終着点から現代美術館はものの5分とかからない。ディヴィット・ホックニー展の受付は長蛇の列だったが、一番奥のコレクション展を目指す。

今回は３つの特集。

その１【被膜虚実】
1980年代以降の作品の紹介。

三上晴子《Scale》
15個のシャワーヘッドと体重計。

三上晴子《Mirror》
洗面所と思しき鏡と歯磨き道具。でもよく見るとかなり硬質、手術用の器具にも工具にも見える。

どちらの作品も暴力的なまでの洗浄を強いられているような圧力を感じる。両方とも1993年なのに、コロナ禍であった昨今を思わずにはいられない。

三上晴子《スーツケース》
場面は空港の手荷物検査のようだが、スーツケースの中身はかなり危ないもののよう…さまざまな危険な物たちが世界各国にばら撒かれている現実社会を思わせる。これも1992−3年の作品なのに、今の時代でもハッとさせられる。
三上晴子…2015年に53歳の若さで病没。惜しい才能と思う。

平川典俊《シリーズ〈S〉》
宗教上自殺がタブー視されるスイスで、実際に自殺の現場となった場所を俯瞰する視点で写真を撮っている。そこで自ら命を絶った人々が最後で見たであろう景色を見ることになるのだが、なんとも言えない気持ちになる。こんな光景が人生最後の光景なんて嫌だ。

石原友明《約束》
広いこの空間に身を置くとなんとも不思議な感じがする。大海原に揺蕩う小舟のような作家の身体イメージは、生まれる前にいたところのように似ている気もしてくる。


名和晃平《PixCell》のシリーズ
好きな作家さんだけれど、意味はちょっと難しい。
「視覚や触覚にとって、世界は表面の連続であり、あらゆるものは様々な
「表皮」で覆われている。私たちはものを「表皮」において感知し認識する、だから、あるものがリアルに感じるかどうか、決定的なのはその表皮の質なのである。「表皮」は感性と物質を繋ぐインターフェイスであり、感性と物質の交流のなかからイメージが生じてくる。＊名和平「名和見平ーシンセンス」図録、2011、p.168より」







あとここでは、百瀬文の二つの映像作品が興味深かった。内容はこちら↓


その２【生誕100年　サム・フランシス】
カラフルで、楽しい、躍動感があり、のびのびして、優しく心温かい、それが第一印象。
サム・フランシスのことを調べたら、出光美術館が出てきた。日本美術のイメージが強い出光美術館だが、出光佐三がサム・フランシスをバックアップしていたことを知る。しかもサムは佐三の四女真子と結婚。そして現在、出光美術館がプライス・コレクション購入にあたって、サム・フランシスの作品を売却、そのことで森ビルと揉めている？事まで。色々びっくりの覚書。



その３【横尾忠則ー水のように】
横尾忠則の特集展示では、絵画とグラフィック作品約70点をご紹介します。「水」の表現に着目しながら、「水のように」様々にかたちを変えていく横尾の軌跡をたどります。
横尾忠則の展示に併せて、横尾とゆかりの深い作家である、アンディ・ウォーホルやトム・ウェッセルマン、デイヴィッド・ホックニー、ジャスパー・ジョーンズの作品をご紹介します。また、常設展示されている宮島達男の一室にも横尾作品を展示します。コレクション展ならではの展示をお楽しみください。

2021年の大個展「GENKYO 横尾忠則　原郷から幻境へ、そして現況は？」（こちら）をコンパクトにまとめたような展示だったが、やはりそれなりに面白い。
私の世代だと、どうしても「横尾忠則＝ポスター」の印象が強く、1980年に画家宣言をしているのだが、ずっと素通りしていた。とは言え、ここ数年やたら観る機会に恵まれ、「横尾忠則＝画家」が私の中で定着してきた。過去日記を検索していたら、ウフィツィ美術館の「ヴァサーリの回廊（巨匠たち自画像コレクション）」に、日本人アーティストとして3名、草間彌生、横尾忠則、杉本博司が加えられたことが書いてあった。なるほど、世界の横尾なのねぇ。







11月5日まで

アルバムあります
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000120870669&owner_id=2083345